漆喰の内装を店舗に導入するメリットは?費用やメンテナンスの注意点を解説|テナント工房
店舗の内装を検討する際、壁面の素材選びは空間の質を決定づける極めて重要な要素です。近年、他店との差別化や本物志向の空間作りを目指す店舗オーナーの間で、日本の伝統的な「漆喰(しっくい)」を内装に取り入れるケースが増えています。
しかし、店舗運営というビジネスの視点では、単におしゃれであるだけでなく、消防法への適合やコスト、さらには日々のメンテナンス性が気になるところです。
この記事では、店舗内装に漆喰を採用する実務的なメリットや費用相場、そして導入前に知っておくべき注意点について詳しく解説します。
読み終える頃には、あなたの店舗に漆喰がふさわしいかどうか、明確な判断ができるようになるでしょう。
店舗の内装に漆喰を選ぶメリット
店舗という不特定多数の人が集まる場所において、漆喰内装の価値は意匠性だけにとどまりません。特に機能面において、店舗運営の課題を解決する多くのメリットを備えています。
まずは、なぜ漆喰が商業施設や飲食店で選ばれ続けているのか、具体的な理由を確認していきましょう。
| メリット | 具体的な効果 | 店舗運営へのメリット |
|---|---|---|
| 防火性能 | 燃えにくい不燃材料である | 消防法などの内装制限をクリアし安全性を確保できる |
| 消臭・調湿 | 臭い成分を吸着、湿度を調整 | 飲食店やペットサロン等の空気環境を快適に維持できる |
| 意匠性 | 手仕事による独特の質感 | 他店にはない高級感やブランドの世界観を演出できる |
メリット1:防火性能で内装制限をクリアできる
一定規模以上の店舗や特定の用途の店舗にとって、消防法や建築基準法に基づく「内装制限」への対応は避けて通れない実務的な課題です。
漆喰は石灰岩を主原料とした無機質の不燃材料であり、火災に非常に強いという際立った特徴を持っています。
万が一の事態でも有害なガスを発生させないため、高層ビル内のテナントやキッチンのある飲食店でも、安全基準をクリアしながら上質な空間を作れます。
メリット2:特殊な構造で消臭効果が期待できる
飲食店において、店内に蓄積する調理臭や油の臭いはお客さまの満足度を左右する大きな要因となります。
漆喰は微細な穴が無数にある多孔質な構造を持っており、空気中の臭い成分を吸着して分解する自浄作用を備えています。
また、主成分の消石灰が持つ強アルカリ性(pH12以上)により、カビや細菌の繁殖を抑制する効果も期待できます。
メリット3:意匠性の高さで差別化を促進できる
職人がコテを使い分けて仕上げる漆喰壁は、光の角度や強さによってさまざまな表情を見せてくれます。
波のような動きをつけたり、あえてラフに仕上げたりすることで、既製品のビニールクロスでは決して真似できない「一点もの」の価値を店舗に与えられます。
本物志向のブランドコンセプトを持つ店舗にとって、この唯一無二の質感は競合他店との決定的な差別化ポイントになり、お客さまの記憶に残る空間作りを実現します。
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店舗を漆喰内装にするデメリット
メリットの多い漆喰ですが、店舗開業というタイトなスケジュールが求められる現場では、いくつか留意すべき点も存在します。
事前に把握して対策を立てておくことが、トラブルを防ぐための第一歩です。
| 注意点 | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 工期(乾燥時間) | 壁紙よりも数倍の日数がかかる | 余裕を持ったスケジュール 設定や速乾材の使用 |
| クラック(ひび割れ) | 建物の動き等で小さなヒビが入る | 下地補強の徹底 目立ちにくいパターン仕上げ |
| 技術力の差 | 職人の腕で仕上がりが大きく変わる | 店舗内装の実績豊富な専門業者への依頼 |
デメリット1:施工期間が長く工期に影響する
漆喰は材料を塗った後に水分を飛ばして乾燥させる時間が必要であり、重ね塗りの工程を含めると、壁紙施工の数倍の日数がかかります。特にオープンの日程が厳密に決まっている店舗開業において、この工期の長さは無視できないリスクとなります。
しかし、最近では乾燥を早める添加剤や、工期を短縮できる薄塗り用の材料も普及しています。デザイナーや施工会社と密に連携して、現実的な工程表を作成しましょう。
デメリット2:ひび割れのリスクがある
漆喰は乾燥に伴う収縮や、地震、あるいは大型車両が通る際の振動などによって、表面に微細な「クラック(ひび割れ)」が生じることがあります。
構造的な問題に直結することは稀ですが、フラットで均一な仕上がりを強く求める場合には、気になってしまうかもしれません。
ひび割れを許容できない場合は、あえて表面に凹凸のあるパターン仕上げにすることで、万が一のクラックを目立ちにくくする工夫が有効です。
デメリット3:腕の良い職人の確保が不可欠
漆喰のクオリティは、現場に入る左官職人の技術とセンスに大きく依存します。角の処理や塗りムラのバランスなど、職人のこだわりによって店舗の完成度は大きく変わってしまいます。
安さだけで業者を選んでしまうと、理想とは異なる仕上がりになり、やり直しで余計なコストが発生することもあります。必ず過去の施工事例を写真や実物で確認し、店舗内装に精通した職人が在籍する会社に依頼しましょう。
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漆喰を店舗に導入する際の費用相場
漆喰の導入を検討する際に、最も気になるのはやはりコスト面です。壁紙(クロス)と比較すると初期投資は高くなりますが、長期的な店舗運営の視点で捉えると、経済的な価値を実感できます。
| 漆喰の種類・工法 | 費用の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 本漆喰(伝統的工法) | 4,000円〜10,000円/㎡ | 職人の高度な技術が必要で、最も質感が良い |
| 漆喰塗料(ローラー施工) | 3,000円〜4,000円/㎡ | 工期が短く、コストを抑えながら漆喰の機能を得られる |
| 既存クロスへの重ね塗り | 3,500円〜5,000円/㎡ | 剥がし費用を抑えられるが、下地確認が重要 |
平米単価は4千円から1万円で施工できる
漆喰施工の費用は、選ぶ材料や仕上げの細かさによって変動しますが、一般的には1平米あたり4,000円から10,000円程度を見込んでおくのが標準的です。
安価なビニールクロスの数倍の価格ですが、漆喰には「張り替え」という概念がなく、適切に維持すれば数十年使い続けられます。
5〜10年おきに発生するクロスの張り替え費用や、その際の休業損失を考慮すると、長期的なランニングコストは効率的であると考えられます。
下地処理が総工費に影響を与える
店舗の改装で漆喰を取り入れる場合、表面の塗り作業以上に「下地」の状態が総額を左右します。
古い壁紙を剥がした後の処理や、アクが浮き出てこないためのアク止めシーラー処理、さらには下地の凹凸を平滑にする作業には、相応の職人の手間がかかります。
下地処理を簡略化すると後のひび割れや変色の原因となるため、見積もり段階でどのような処理が含まれているかを慎重に確認しましょう。
耐用年数によってコストを低減できる
ビニールクロスは経年劣化により、5年から10年もすれば剥がれや変色が目立ち始めますが、漆喰は時間が経過するほどに二酸化炭素を吸って石灰石へと戻り、硬く強固になっていきます。
古くなるほどに味わいが増す素材であるため、リニューアルの回数を減らせる点は大きなメリットです。
一度の投資で長く使える「持続可能な内装」として、漆喰は店舗経営の基盤を支える賢い選択肢となります。
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店舗でもできる漆喰のメンテナンス方法
店舗運営において、壁面の汚れは清潔感を損なう大きな悩みです。
漆喰は「手入れが難しい」と思われがちですが、実はその物理的な特性を理解すれば、スタッフの手で簡単に美しさを維持できます。
| 汚れ・傷の種類 | メンテナンス方法 | 使用する道具 |
|---|---|---|
| 手垢・軽い擦れ | 表面を優しくこする | 文房具の消しゴム |
| 深い傷・欠け | 同素材を薄く上塗りする | 補修用漆喰、ヘラ |
| 埃・静電気汚れ | 軽く表面を掃う | はたき、乾いた布 |
小さな汚れは消しゴムで対応
お客さまの手が触れる場所にできやすい軽い手垢や、カバンが当たってできた薄い擦り跡などは、意外にも市販の消しゴムで簡単に落とすことができます。
また、少し目立つ汚れには、細かいサンドペーパー(紙やすり)で表面を薄く削るという方法も効果的です。
漆喰は壁そのものが厚みのある「石」の層であるため、表面を削っても下地が見えてしまうことはほとんどありません。
大きな傷は上塗りで補修
什器の移動などで壁が大きく欠けてしまった場合でも、漆喰なら部分的な修復が可能です。
壁紙のように広範囲を剥がして貼り直す必要はなく、傷の部分に新しく漆喰を塗り込むことで補修が完了します。
施工時に余った材料を少量保管しておけば、専門業者を呼ばずともスタッフがその場で直せるため、常に店舗をベストな状態に保ちたいオーナーにとって大きな安心感となります。
定期的な清掃で白さを維持
漆喰は静電気を帯びにくい性質があるため、空気中のホコリを引き寄せることがほとんどありません。
日常的なお手入れとしては、はたきや乾いた布で表面のホコリを優しく払う程度で十分です。化学的な洗剤や大量の水を使う必要がないため、ランニングコストもあまりかからず、自然素材ならではの健やかな空間を長く維持し続けられます。
店舗内装における漆喰の活用事例
漆喰の魅力を実務に取り入れている企業の事例を知ることで、自社の店舗にどのように活用すべきか、そのヒントが見えてきます。
京都の銀閣寺近くに開店した日本料理店では、古民家を活かした内装に漆喰を採用しています。漆喰に反射する柔らかい光が店全体を包み込み、来店客を迎える特別な雰囲気を生み出しました。
店内は漆喰を中心とした白塗装で仕上げられており、職人が何度も手をかけた「洗い出し」技法により、座敷席へと続く通路も洗練された空間となっています。
個室の壁には和紙を使用し、漆喰とのコントラストで温かみを演出しています。
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まとめ
この記事の要点をまとめます。
- 漆喰は不燃材料として店舗の内装制限をクリアしつつ、消臭・調湿機能によって快適で清潔な空気環境を維持できる非常に実用的な素材。
- 初期費用は壁紙よりも高くなるが、張り替え不要な耐久性と経年変化による美しさを考慮すれば、長期的なコストパフォーマンスは極めて優秀。
- 施工期間の確保や職人の選定といった注意点を事前にクリアすることで、他店にはない唯一無二の高級感と安心感を備えた店舗空間を実現できる。
漆喰の内装は、単なる壁の仕上げという枠を超え、お客さまに提供する「体験」の質を向上させる価値ある投資となります。デザインと機能、そして将来のメンテナンスまでを見据えた上で、ぜひあなたの店舗にも漆喰の持つ本物の魅力を取り入れてみてください。





