店舗内装の耐用年数を徹底解説!減価償却の仕組みや勘定科目も紹介|テナント工房
店舗の開業やリニューアルで内装工事を行った際、その費用をどのように会計処理すればよいか迷う方も多いのではないでしょうか。特に「耐用年数」は、減価償却を計算するうえで重要な要素であり、節税にも関わってきます。
この記事では、店舗内装の耐用年数について、減価償却の基本的な仕組みから、具体的な勘定科目ごとの耐用年数、注意点までをわかりやすく解説します。
目次
店舗内装の費用計上における耐用年数とは?店舗内装工事で使われる勘定科目と耐用年数の考え方
【一覧表】建物の構造・用途別の法定耐用年数
【一覧表】建物附属設備の法定耐用年数
店舗内装の減価償却で注意すべきポイント
まとめ
店舗内装の費用計上における耐用年数とは?
店舗の内装工事にかかった費用は、一度に経費として計上するのではなく、何年かにわたって分割して費用計上する必要があります。
この会計処理を「減価償却」といい、計算の基礎となるのが「耐用年数」です。まずは、これらの基本的な考え方について理解を深めましょう。
資産価値の減少を費用化する減価償却の仕組み
減価償却とは、時間の経過とともに価値が減少していく固定資産の取得費用を、資産が使用できる期間にわたって分割し、費用として計上していく会計上の手続きのことです。
店舗の内装や設備は、長期間にわたって使用することで収益を生み出すため、取得した年に全額を経費とするのではなく、使用期間に応じて費用を配分する方が、企業の損益をより正確に表すことができるという考え方に基づいています。
税法で定められた「法定耐用年数」
減価償却を計算する際に用いるのが「法定耐用年数」です。資産の種類や構造、用途ごとに法律(減価償却資産の耐用年数等に関する省令)で定められた年数のことを指します。
税務上の公平性を保つために、個々の資産の状況にかかわらず、一律の年数が定められています。店舗の内装工事費を減価償却する際は、この法定耐用年数に基づいて計算を行う必要があります。
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用語 |
説明 |
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減価償却 |
固定資産の取得費用を、耐用年数にわたって分割して費用計上する会計処理 |
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法定耐用年数 |
税法で定められた、資産ごとの一律の使用可能期間の見積もり |
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固定資産 |
土地、建物、機械、車両など、1年以上継続して事業のために使用される資産 |
参考:減価償却資産の耐用年数等に関する省令 | e-Gov 法令検索
実際の使用可能期間である「物理的耐用年数」との違い
法定耐用年数は、あくまで税法上の計算のために定められた年数であり、資産が物理的に使用できなくなるまでの期間(寿命)とは異なります。例えば、適切にメンテナンスを行えば法定耐用年数を超えて使用できる設備もあれば、使用頻度によっては法定耐用年数よりも早く使えなくなるケースもあります。
会計処理を行う上では、この物理的な寿命ではなく、税法で定められた法定耐用年数を用いることを覚えておきましょう。
【関連記事】厨房機器の耐用年数って?交換時期や減価償却についても解説|テナント工房
店舗内装工事で使われる勘定科目と耐用年数の考え方
店舗の内装工事と一言でいっても、その内容は多岐にわたります。壁紙の張り替えや間仕切りの設置、厨房設備の導入など、工事の内容によって会計処理で用いる勘定科目が異なり、それぞれに異なる耐用年数が適用されます。
ここでは、主な勘定科目とその考え方について解説します。
内装工事は原則「建物」として計上する
店舗の天井、床、壁など、建物そのものに直接施す造作工事は、原則として「建物」の勘定科目で処理します。この場合、適用される耐用年数は、内装の構造ではなく、その建物本体の構造と用途によって決まります。
例えば、鉄筋コンクリート造の店舗に木造の内装を施した場合でも、鉄筋コンクリート造の店舗用としての耐用年数を適用することになります。
【関連記事】内装工事の勘定科目はどう処理する?金額・目的別の仕訳を徹底解説!
電気や空調設備は「建物附属設備」に分類する
内装工事の中でも、建物と一体となって機能する設備は「建物附属設備」として区別されます。具体的には、照明などの電気設備、エアコンなどの冷暖房設備、厨房の給排水・ガス設備、換気設備などが該当します。
これらは建物とは別に、それぞれの設備に応じた耐用年数が定められています。
| 設備の種類 | 勘定科目 |
| 天井 床 壁 間仕切りなどの内部造作 |
建物 |
| 照明 配線 冷暖房 換気 給排水設備 |
建物附属設備 |
| 陳列棚 カウンター テーブル 椅子 |
器具備品 |
陳列棚やカウンターは「器具備品」で計上する
建物に固定されていない、あるいは取り外しが容易な陳列棚や可動式のカウンター、テーブル、椅子、レジスターといった備品類は、「器具備品」として計上します。これらも建物や建物附属設備とは別に、品目ごとに詳細な耐用年数が定められています。
どの勘定科目に該当するかによって耐用年数が大きく異なるため、工事の見積書などを確認し、正しく分類することが重要です。
【一覧表】建物の構造・用途別の法定耐用年数
勘定科目が「建物」に分類される内装工事の耐用年数は、その物件が自社所有か賃貸か、また建物の構造と用途によって異なります。国税庁の定める耐用年数表を基に、それぞれのケースについて見ていきましょう。
自社所有物件の場合の耐用年数
自社で所有している建物に内装工事を施した場合、その工事部分は建物本体と同じ耐用年数を適用します。以下は、店舗や飲食店として使用する場合の主な構造別の耐用年数です。
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構造・用途 |
店舗・住宅用の耐用年数 |
飲食店用の耐用年数 |
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鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 |
39年 |
34年 |
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れんが・石・ブロック造 |
38年 |
39年 |
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金属造(骨格材の肉厚4mm超) |
34年 |
31年 |
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木造・合成樹脂造 |
22年 |
20年 |
賃貸物件の場合の耐用年数
賃貸物件に内装工事を施した場合、建物本体の法定耐用年数をそのまま適用するのは実態と合わないため、税法上、特例が認められています。この場合、内装工事の種類や材質などを考慮して「合理的に見積もった年数」を耐用年数として使用できます。
一般的に、この合理的な見積もり年数は10年~15年程度とされることが多いです。 契約内容によっては、賃借期間を耐用年数とすることも可能ですが、契約の更新ができないなど特定の条件を満たす必要があります。
参考:No.5406 他人の建物に対する造作の耐用年数|国税庁
【一覧表】建物附属設備の法定耐用年数
内装工事の中でも、空調や衛生設備など「建物附属設備」に分類されるものには、以下の通り独立した耐用年数が定められています。これらの設備は、建物の構造に関わらず、設備の種類によって耐用年数が決まります。
電気設備やガス設備の耐用年数
建物附属設備の中でも、電気設備やガス設備、衛生設備は店舗運営に不可欠なものです。これらの設備の法定耐用年数は、その規模や構造によって細かく定められていますが、一般的な店舗に設置される主要な設備の耐用年数は以下の通りです。
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設備の種類 |
主な内容 |
法定耐用年数 |
|
電気設備 |
配線 照明設備など |
15年 |
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給排水・衛生設備 |
給水管 排水管 洗面台 トイレなど |
15年 |
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ガス設備 |
ガス管 ガスメーターなど |
15年 |
冷暖房設備や換気設備の耐用年数
快適な店舗環境を維持するための空調設備も、建物附属設備として減価償却の対象となります。特に、出力が22キロワット以下の小規模な店舗用エアコンなどは、耐用年数が別に定められています。
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設備の種類 |
主な内容 |
法定耐用年数 |
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冷房、暖房設備 (出力22kW以下) |
店舗用エアコンなど |
13年 |
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ダクトを通じて広範囲に送風するもの |
ビル用マルチエアコンなど |
15年 |
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換気設備 |
換気扇、排煙設備など |
15年 |
店舗内装の減価償却で注意すべきポイント
耐用年数を正しく適用するだけでなく、減価償却を行う際にはいくつか注意すべき点があります。特に、工事の内容が経費にあたるのか資産計上すべきなのか、また中古物件の場合はどうなるのか、といった点は判断に迷うことが多いポイントです。
1.資産価値を高める工事は「資本的支出」になる
内装工事の費用が、その資産の価値を高めたり、耐久性を増したりするものである場合、それは「資本的支出」と判断され、固定資産として計上し減価償却を行う必要があります。例えば、店舗の用途変更のための大規模な模様替えや、避難階段の取り付けといった工事がこれに該当します。
2.原状回復や維持管理は「修繕費」として計上する
一方、資産の価値を高めるのではなく、通常の維持管理や、き損した部分を元の状態に戻すための工事にかかった費用は「修繕費」として、その年の経費として一括で計上することができます。
壁紙の部分的な張り替えや、壊れた設備の修理などがこれにあたります。ただし、一つの修理費用が20万円を超える場合など、資本的支出か修繕費かの判断が難しいケースもあるため、注意が必要です。
| 支出の種類 | 内容 | 会計処理 |
| 資本的支出 | 資産の価値や耐久性を高めるための支出 | 固定資産として計上し、減価償却を行う |
| 修繕費 | 通常の維持管理や原状回復のための支出 | その年の経費として一括計上する |
3.中古物件を取得した場合の耐用年数の計算方法
中古の店舗物件を取得して内装工事を行った場合、耐用年数の計算方法が新品とは異なります。法定耐用年数をすべて経過している資産の場合は、その法定耐用年数の20%に相当する年数を耐用年数とします。
法定耐用年数の一部が経過している場合は、「(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×20%)」という計算式で算出します。計算結果に1年未満の端数がある場合は切り捨て、年数が2年未満になる場合は2年とします。
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まとめ
店舗内装の耐用年数は、工事の内容によって適用される勘定科目や年数が異なり、複雑に感じられるかもしれません。しかし、減価償却の仕組みを正しく理解し、自社の内装がどの分類に当たるかを把握することで、適切な会計処理と節税につなげることが可能です。
この記事を参考に、自社の資産状況を確認し、正確な経費計上を行いましょう。





