脱サラして飲食店を開業するには?失敗しないための資金目安と準備手順を解説|テナント工房

  • 2026.9.30

  • 最終更新日:

昔からの夢だった自分の店を持ちたいと考えても、飲食業界の廃業率の高さを耳にすると、踏み出す判断は難しくなるものです。脱サラして飲食店を開業するには、800万〜1,500万円程度の資金と、客観的な目線での入念な事業計画が求められます。

本記事では、未経験者が陥りやすい失敗の原因を押さえたうえで、資金調達の方法や物件選び、必要な資格取得までの手順を順を追って解説します。

この記事の要約

  • 飲食店経営はやりがいが大きい一方で、宿泊業・飲食サービス業は他業種と比べて廃業率が高い厳しい環境にある
  • 趣味やこだわりを優先しすぎず、ターゲット層のニーズと合致する立地やメニューを選ぶ
  • 初期費用は800万〜1,500万円を見込み、総額の2〜3割の自己資金を用意する。運転資金は初期費用とは別に3ヶ月分を確保する
  • 融資審査は会社員としての信用がある在職中に通過させ、退職前に計画を固めておく
  • 店舗デザインや物件探しは、飲食店支援の実績が豊富な専門業者に相談してリスクを抑える



脱サラして飲食店を開業する魅力と現実

脱サラして飲食店を開業する魅力の一つは、自由な店作りができる点です。一方で、厳しい経営環境に向き合う必要もあります。

観点 評価されるポイント・懸念される実態
理想の追求 自分の空間と料理を自由に表現できる
収入とやりがい 成果が収入に直結し達成感を得やすい
金銭的プレッシャー 固定給がなくなり毎月の売上確保が求められる
経営リスク 他業種と比べて廃業率が高く競争が激しい

理想の空間と料理を自由に追求できる

飲食店経営の大きな魅力の一つは、自らが思い描くコンセプトの店舗を実現できる点です。会社員時代のように組織のルールや上司の意向に縛られず、メニューから内装まで自身の裁量で決定できます。こだわりの料理を提供し、来店した客から直接評価を得られる環境は、大きなモチベーションにつながるでしょう。


頑張りが収入に直結しやりがいを得られる

事業が軌道に乗れば、会社員時代の固定給を上回る収入を得ることも可能です。売上を伸ばすための施策が成果に結びつけば、経費や返済分を差し引いた利益が自分の成果として残ります。収益を上げるための努力は求められますが、労力を成果として実感しやすい点は大きな利点の一つです。


毎月の固定給を失う金銭的プレッシャー

独立すると、毎月決まった日に振り込まれていた安定した給与はなくなります。来店数が落ち込む月や予期せぬトラブルがあっても、家賃や水道光熱費などの固定費は毎月支払う必要があります。体調不良で休業すれば収入も途絶えるため、健康管理を含めた自己管理能力が問われるでしょう。


廃業率が高く競争が激しい市場環境

飲食業界は新規参入がしやすい分、事業を継続する難易度が高い分野です。中小企業庁『中小企業白書』の業種別開廃業率(厚生労働省「雇用保険事業年報」に基づく集計)では、宿泊業・飲食サービス業の廃業率が全業種の中で最も高くなっています。脱サラで開業を目指す際は、厳しい市場環境を踏まえ、綿密な資金計画を立てておくのが賢明でしょう。

参考:中小企業庁:2020年版「中小企業白書」 第1部第3章第1節 企業数の変化と開廃業の動向

参考:2024年版「小規模企業白書」 第2節 新たな担い手の創出 | 中小企業庁



未経験の脱サラ飲食店が失敗しやすい原因とは?

未経験からの開業で失敗するパターンには、資金不足や顧客目線の欠如といった共通点が見られやすいです。

失敗の要因 具体的な状況・陥りやすい落とし穴
ニーズのズレ 自身の趣味を優先しすぎて客層に合わない
運転資金の枯渇 内装費などに予算をかけすぎて資金がショートする
立地のミスマッチ メニューの価格帯やターゲットに合わない場所に出店する
集客の軽視 開店後の販促を怠り新規顧客を獲得できない

こだわり優先で顧客ニーズとズレるため

飲食店経営はビジネスであり、顧客が求めるものを提供できなければ、売上は伸びにくくなります。「自分の理想の味」を追求するあまり、地域の客層や価格帯のニーズを考慮できていないケースも見られます。自分の理想を土台にしつつ、立地の客層に受け入れられる価格帯やメニュー構成へ調整する柔軟さが求められるでしょう。


初期投資が膨らみ運転資金がショートするため

こだわりの内装や最新の厨房機器に資金を集中させ、開店後の運転資金を残していないパターンです。オープン直後は想定通りに客数が伸びないケースも多く、内装や厨房機器に予算を使い切ると、赤字期間を乗り切れないまま資金が尽きてしまいます。資金が不足すれば、黒字化する前に事業の継続が難しくなるおそれがあります。

【関連記事】居抜き物件で飲食店の開業!~メリットと注意すべき点も解説~|テナント工房


ターゲットに合わない立地を選ぶため

家賃の安さだけで物件を決めると、狙っている客層が来店しにくい立地になるおそれがあります。たとえば、学生向けの低価格な定食屋を年配層が多く住む住宅街に出店しても、想定した集客につながりにくいでしょう。提供する料理とターゲット層の行動範囲が一致する場所を、慎重に見極めることが求められます。家賃の安さで妥協した立地は、後から集客費用をかけても挽回しにくく、移転には再度まとまった資金が必要になります。


集客や販促を後回しにして客足が伸びないため

おいしい料理を提供する店を開いても、自然と客が集まるとは限りません。特に開業初期は認知度が低いため、告知をしないままオープンすると、来店のきっかけが生まれません。味や接客の質を高めることは前提として、まずは店を知ってもらうための取り組みを続けたいところです。



飲食店開業に必要な資金目安と資金調達の手段

小規模な飲食店でも多額の開業資金が必要になります。計画的な資金準備と調達が、その後の経営を左右する要素の一つと言えるでしょう。

資金の種類・調達手段 目安と活用における注意点
初期費用の総額 800万〜1,500万円程度を想定する
運転資金の確保 最低3ヶ月分の家賃・仕入れ代・生活費を残す
自己資金の割合 融資審査を考慮し総額の2〜3割を貯蓄しておく
融資・補助金の活用 日本政策金融公庫の創業融資制度などを利用する

初期費用は小規模店でも800万〜1,500万円

10〜15坪程度の小規模な飲食店であっても、物件取得費や内装工事費を含めると800万〜1,500万円程度の初期費用がかかるのが一般的です。前の飲食店の内装や設備が残っている居抜き物件を活用すれば費用を抑えられますが、数百万円単位の投資は必要になるケースが多いでしょう。まずはどのような店を作りたいかを明確にし、大まかな見積もりを算出しておくのがおすすめです。

参考:「2025年度新規開業実態調査」|日本政策金融公庫総合研究所

【関連記事】飲食店の開業資金はいくら?内訳から資金調達、自己資金の目安まで徹底解説!


赤字に備える最低3ヶ月分の運転資金

初期費用とは別に、開業後の生活費や経費を賄うための運転資金を手元に残しておく必要があります。新店舗が地域に認知され、売上が次第に安定するまでには、半年程度の時間がかかるとされています。そのため運転資金は半年分を目標とし、最低でも3ヶ月分は家賃・仕入れ代・自身の生活費を含めて確保しておきたいところです。3ヶ月分しか用意できない場合は、開業時期を遅らせて貯蓄を増やす判断も選択肢になります。


融資審査で意識したい総費用2〜3割の自己資金

金融機関から開業資金の融資を受ける際は、事業への取り組み姿勢を示す自己資金の額も審査の材料になります。日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」では、開業時の資金調達額(平均1,219万円)に占める自己資金の割合は22.9%(平均279万円)で、2〜3割程度が実態の目安です。制度上の自己資金要件は設けられていませんが、全額を借り入れに頼る計画は説明が難しくなるため、在職中から計画的に貯蓄を進めておきましょう。

参考:「2025年度新規開業実態調査」|日本政策金融公庫総合研究所

参考:新規開業に関する調査|日本政策金融公庫


日本政策金融公庫の創業融資と自治体の補助金

足りない資金は、政府系金融機関である日本政策金融公庫の創業融資制度を活用して調達するのが一般的です。足りない資金は、政府系金融機関である日本政策金融公庫の創業融資制度を活用して調達するのが一般的です。創業期の方が利用しやすい制度が用意されており、要件を満たせば無担保・無保証人で借りられるケースや、利率が引き下げられるケースもあります。最新の適用条件は公庫の窓口で確認しておきましょう。あわせて、国の小規模事業者持続化補助金や自治体独自の創業補助金を受け取れるケースもあるため、各機関の窓口に確認しておきましょう。

参考:創業融資のご案内|日本政策金融公庫

参考:小規模事業者持続化補助金について | 中小企業庁



会社を辞める前に進めておきたい開業の準備ステップ

退職してから動き出すのではなく、収入が安定している在職中に開業準備の大部分を済ませておきましょう。在職中にどこまで進められるかが、開業後の資金と時間の余裕を左右します。

準備ステップ 具体的な実施内容
コンセプトの決定 誰に・何を・いくらで提供するかを言語化する
事業計画書の作成 収支予測や融資の根拠となる詳細な計画を練る
テナント物件の選定 商圏分析を行いターゲットに合う立地を絞り込む
内装工事の進行 保健所へ相談しつつ衛生基準を満たす店舗を作る
融資審査の通過 会社員の信用を活かし在職中に資金調達を確定させる

【関連記事】京都での飲食店開業に必要な準備は?成功への手順と費用相場を解説


ステップ1:誰に何を提供するかコンセプトを固める

開業準備の第一歩は、ターゲット層・提供メニュー・価格帯・営業時間を具体的に決めるコンセプト設計です。コンセプトが曖昧なまま物件を探したり内装を決めたりすると、店舗全体の統一感が失われかねません。「30代の会社員が仕事帰りに一人で立ち寄れる、客単価3,000円の和食居酒屋」のように、明確に言語化しておきましょう。


ステップ2:融資や契約の根拠となる事業計画書を作る

頭の中にあるコンセプトは、第三者にも伝わるよう数値化し、事業計画書としてまとめておきましょう。毎月の売上予測、原価率、人件費、家賃などを計算し、現実的に利益が出る構造になっているかを検証します。事業計画書は日本政策金融公庫の融資審査で重視される書類の一つとされるため、客観的な説得力を持たせることが求められます。


ステップ3:ターゲットの動線を分析して物件を絞り込む

コンセプトに合致する客層が対象エリアをどの時間帯に通行しているか、実際に現地で確認しながら物件を選定しましょう。優良なテナント物件は市場に出回る前に契約が決まるケースも多く、不動産会社と密に連絡を取り合うことが求められます。競合店の出店状況も合わせて調査し、成果を見込める立地を見極めましょう。


ステップ4:保健所に事前相談しながら内装工事を進める

物件が決まったら、内装設計と工事を専門業者に依頼します。注意したいのは、完成後に保健所の検査を通過しなければ営業許可が下りない点です。手洗いの設置場所や厨房の区画など、細かい衛生基準が定められています。着工前に図面を管轄の保健所へ持ち込み、基準を満たしているか事前相談を行いましょう。

【関連記事】飲食店の内装費用はいくら?坪単価の相場と安く抑えるコツを解説!


ステップ5:在職中に金融機関の融資審査を通す

会社員という立場は毎月定期的な収入があるため、金融機関からの信用度が高い状態にあります。退職後に融資を申し込むよりも、在職中に事業計画を固めて融資の内定を得ておくほうが、審査で有利になりやすいでしょう。資金調達のめどが立った段階で勤務先へ退職の意向を伝えると、より安心して準備を進められます。



営業を始めるにはどんな資格や手続きが必要?

飲食店の開業には、行政機関への各種届け出と必要な資格の取得が義務付けられています。開業前に必要な手続きと資格を整理しておきましょう。

資格・手続き 提出先・取得方法
食品衛生責任者 都道府県知事等が行う講習会、または知事等が適正と認める養成講習会を受講する
飲食店営業許可 管轄の保健所へ図面を提出し、施設の立ち入り検査を受ける
防火管理者 建物全体の収容人数が30名以上ならテナントごとに消防署へ届出を行う
開業届の提出 開業した年分の所得税の確定申告期限までに管轄の税務署へ提出する

保健所の講習で取得する食品衛生責任者

飲食店を営業する施設には、1名以上の「食品衛生責任者」を置く必要があります。調理師や栄養士などの資格を持っていれば講習は不要ですが、無資格の場合は都道府県知事等が行う講習会、または知事等が適正と認める養成講習会(多くは1日程度、eラーニング型もあり)を受講することで資格を取得できます。開業直前は講習が満員になるケースも多いため、早めに予約して受講を済ませておきましょう。

参考:食品衛生責任者 |「食品衛生の窓」東京都保健医療局

参考:食品営業に関する申請・届出 – 福島県ホームページ


図面完成後に保健所へ出す飲食店営業許可

内装工事のめどが立ち、厨房設備が整うタイミングで保健所へ「飲食店営業許可」を申請します。書類提出後には保健所の担当者による立ち入り検査が行われ、シンクの数や扉の有無といった施設基準を満たしているかが確認されます。基準を満たしていれば施設基準への適合が確認され、許可書の交付後に営業を開始できます。交付までは検査から1週間〜10日程度かかる自治体もあるため、開店日は管轄の保健所に確認しながら決めましょう。

参考:新たに食品に関する営業を始められる皆様へ 台東区ホームページ

参考:食品営業の許可・届出(橋本保健所) | 和歌山県


建物全体の収容人数30名以上で必要な防火管理者の選任届

飲食店などの特定用途が入る建物では、建物全体の収容人数が30名以上になる場合、テナントごとに「防火管理者」の選任と消防署への届け出が義務付けられています。自店の客席が小さくても、同じ建物に他のテナントが入っていれば対象になるケースがあるため注意が必要です。防火管理者の資格は、消防機関などが実施する講習(甲種は2日、乙種は1日)を修了することで取得できます。

参考:防火管理者が必要な防火対象物と資格 | 東京消防庁

参考:さいたま市/防火管理者の選任、解任届出はお済みですか


確定申告期限までに出す個人事業の開業届

個人事業主として飲食店を開業する場合、管轄の税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。提出期限は、事業を開始した日から1ヶ月以内とされています。期限を過ぎても受け付けられますが、確定申告までには必ず提出しておきましょう。青色申告を選ぶ場合は「所得税の青色申告承認申請書」を、その年の3月15日まで(1月16日以後の開業ならば開業日から2か月以内)に提出する必要があるため、こちらの期限を過ぎないよう注意しておきましょう。

参考:開業する場合|国税庁

参考:A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

参考:No.2072 青色申告特別控除|国税庁



脱サラ後の経営を軌道に乗せるために開業前から押さえたいコツ

開業後の競争環境で安定した収益を上げ続けるには、開店前の準備段階から手を打っておく必要があります。ここでは開業前後に押さえたいポイントを整理します。

成功のポイント 具体的な行動・心構え
競合回避の戦略 周辺店舗とメニューやターゲットが被らないよう工夫する
専門家の活用 店舗デザインや工事は飲食特化のプロに依頼する
WEB集客の徹底 SNSやGoogleマップでオープン前から露出を増やす
小さなテスト 週末起業や間借り営業で実力を試してから本格始動する

競合が少なく強みが活きる業態とエリア選び

同じ商圏内に似たコンセプトの競合店がある場合、後発の新規店舗がシェアを獲得するのは難しくなります。周辺の店舗を丁寧に調査し、まだ満たされていない需要を見つけ出すことが求められます。たとえば、周辺に居酒屋が多いエリアであれば、深夜までこだわりのコーヒーを楽しめる夜カフェ業態も選択肢の一つです。自店の強みが活きる領域を見極めましょう。

【関連記事】軽飲食と重飲食の違い!開業前に知っておくべき基礎知識|テナント工房


物件探しと内装は飲食店支援に強い専門業者に依頼

内装工事の費用を抑えるために知人の大工へ依頼した結果、水回りのトラブルや保健所の基準に適合せず、やり直しが必要になるケースもあります。飲食店の内装では、従業員が動きやすい動線設計や厨房機器の適正な配置など、専門的なノウハウが求められます。物件探しからデザイン、施工までを一貫して任せられる実績豊富な業者に依頼すると、開業後のトラブルや追加工事を防ぎやすくなるでしょう。


SNSとGoogleマップで開店前から認知づくり

オープン当日に満席を目指すのであれば、工事期間中からSNSで情報発信を続けるのがおすすめです。メニューの試作風景や内装が仕上がっていく過程を公開することで、近隣住民の期待感を高められます。Googleマップ上の店舗情報を管理できるGoogleビジネスプロフィールにも登録し、ネット検索経由の集客経路を整えておきましょう。


退職前に間借り営業や週末起業で需要テスト

はじめから多額の資金を投じて店舗を構えることに不安がある場合は、リスクを抑えたテストマーケティングがおすすめです。既存の飲食店が営業していない休日のランチタイムなどを借りて営業する「間借り営業」から始める方法もあります。実店舗を持つ前に客の反応を確かめ、メニューや価格設定を見直せる貴重な機会になるでしょう。



まとめ

脱サラして飲食店を開業するには、800万〜1,500万円程度の初期費用と、ターゲットを見据えた詳細な事業計画が求められます。自己資金の確保や融資審査、保健所への相談などを在職中から計画的に進めることで、開業前後のリスクを抑えやすくなるでしょう。限られた時間のなかで判断を重ねる場面では、外部の知見を借りると負担を軽くできます。

在職中に資金や事業計画を整えても、立地の妥当性や内装費の相場は独力で判断しにくいものです。テナント工房では、滋賀・京都・大阪で商圏分析に基づく物件探しから店舗デザイン、設計、内装工事、資金計画のご相談まで対応しています。

宣伝方法の選び方やAI活用、先輩開業者の失敗談を学べるセミナーを開いていますので、開業準備の判断材料としてご覧ください。

▶セミナーのお知らせ【広報×営業のプロが伝授!】|開業ならテナント工房

開店後は販促の準備が後回しになり、認知が広がらないまま日々の営業に追われる場合もあります。ホームページや看板、印刷物、SNSやMEOの対策、オリジナルウェアの制作まで相談できる協力先をまとめてご紹介していますので、開業後に頼れる相手を早めに確認しておくと安心です。

▶パートナー企業様のご紹介|開業ならテナント工房