厨房機器の耐用年数って?交換時期や減価償却についても解説
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2025.4.18
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最終更新日:
飲食店で使用している厨房機器は経費に該当するため、減価償却による節税が可能です。ただし、減価償却できる期間には限りがあるため、あらかじめ耐用年数を確認しておきましょう。
今回は、厨房機器の耐用年数に関する基礎知識や、交換時期を見極めるポイント、減価償却の基礎知識、厨房機器の寿命を延ばす方法について解説します。厨房機器のリースに関するメリット・デメリットも紹介しているので、購入かリースか迷っている方もぜひ参考にしてください。
厨房機器の耐用年数とは
耐用年数とは、その資産が本来の用途用法によって通常予定される効果を上げられる年数のことです。
厨房機器は長く使用していると劣化が進み、資産としての価値が次第に減少していきます。
価値がなくなるまでの期間=耐用年数は、国が定めた減価償却資産の耐用年数等に関する省令によって定められています。「飲食店業用設備」の場合は8年 です(※)。
※国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf
主な厨房機器の種類と耐用年数一覧
前述の通り、「飲食店業用設備」に該当する厨房機器の耐用年数は、8年と定められています。一方で、「器具・部品」に該当する厨房機器の耐用年数は、種類によって異なります。
主な厨房機器の種類と耐用年数は、以下の通りです(※)。
冷蔵庫・冷凍庫 | 6年 |
製氷機 | 6年 |
冷蔵ショーケース | 6年 |
コールドテーブル | 6年 |
ガスフライヤー | 6年 |
食器棚 | 8年 |
シンク | 5年 |
※国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf
耐用年数と法的な基準
厨房機器の耐用年数は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の「別表第二 機械及び装置の耐用年数表」に明記されています。なお、ここで定められている耐用年数は、資産が壊れたり老朽化したりして使えなくなった場合の物理的耐用年数(耐久年数)とは全く異なるため、注意しましょう。
省令で定められた耐用年数は、物理的耐用年数と区別するために「法定耐用年数」とも呼ばれています。
耐用年数を超えて使用するリスク
耐用年数は、あくまで減価償却資産としての価値を計るためのものです。そのため、耐用年数を超えたからといって、直ちに厨房機器が使えなくなるわけではありません。
しかし、耐用年数を超えると資産としての価値は失われ、それ以上減価償却ができなくなります。すると、所得税の確定申告で厨房機器を経費計上できなくなるため、節税効果は得られません。
また、近年の厨房機器は頑丈にできているものが多いですが、使用年数が8年を超えると劣化や故障のリスクが高くなるのも事実です。厨房機器は飲食店にとって営業の可否を左右する重要な機器であるため、不具合や故障を起こすリスクは最小限にとどめる必要があります。
以上2点のリスクを考慮すると、耐用年数を超えた厨房機器はなるべく早めに買い替えたほうが良いでしょう。
定期的なメンテナンスの重要性
耐用年数を超えていなくても、厨房機器は定期的にメンテナンスを行うことが大切です。お手入れを怠ると、細菌や雑菌などが付着して衛生面や安全性が低下し、食中毒などのトラブルを引き起こす原因になることもあるからです。
また、油汚れや食材かすなどが厨房機器に付着していると、調理の際に引火し、火災が発生する恐れがあります。さらに、ガス機器の場合は汚れや劣化によって不完全燃焼が起こって一酸化炭素中毒になったり、ガス漏れや爆発が発生したりすることも考えられます。
これらのリスクやトラブルを未然に防ぐためにも、厨房機器は耐用年数にかかわらず、小まめなメンテナンスを実施しましょう。
厨房機器の交換時期を見極めるポイント
耐用年数を超えていなくても交換を検討したほうが良いケースもあるため、日頃から厨房機器の状態をチェックし、適切な交換時期を見極めましょう。
ここでは、厨房機器の交換時期を判断するポイントを4つご紹介します。
効果的な交換時期の判断基準
厨房機器の適切な交換時期を判断する基準は大きく分けて2つあります。
1つ目は耐用年数です。先でも説明した通り、耐用年数は資産そのものの耐久性を示すものではありませんが、飲食業ではほぼ毎日厨房機器を使用するため、数年経過すると劣化が進んでいても不思議ではありません。また、節税効果もなくなるため、問題なく使用できていたとしても交換を検討したほうが良いでしょう。
2つ目は厨房機器の状態です。性能や機能が明らかに低下していたり、細かい不具合が頻発したりしているのなら、耐用年数を超えていなくても交換を考えたほうが無難です。
交換時期に影響を与える要因
耐用年数や性能・機能の低下だけでなく、事業の拡大や変更を検討している場合も交換を検討するタイミングです。
例えば、より大きな店舗に移動してお客さまの数が増えた場合、それまで使用していた厨房機器では対応が追いつかなくなる可能性があります。また、軽食中心のカフェから、本格的な料理を提供するレストランに変更するといった場合も、やはり従来の厨房機器ではキャパシティオーバーになってしまうでしょう。
このように事業の拡大・変更を検討している場合は耐用年数や厨房機器の状態にかかわらず、買い替えを検討するのをおすすめします。
交換時期を見逃さないためのサイン
適切な交換時期を見逃さないためには、日頃から厨房機器を小まめにチェックしておくことが大切です。定期点検のときはもちろん、清掃する際にも落ちにくい汚れはないか、穴やひび割れなどがてきていないか、などを調べておくと劣化のサインにいち早く気付けるでしょう。
交換を決定する際のコスト考慮
厨房機器を交換する際のコストは、機器の種類や数によって異なります。特に大型の機器は交換に多大な費用がかかるため、なるべく交換を後回しにしたいと考える方も多いでしょう。
しかし、劣化した厨房機器を使用し続けると、やがて完全に使えなくなり、営業をストップせざるを得なくなる恐れがあります。その場合の休業損害が、厨房機器の交換費用より大きくなることもあるため、交換すべきタイミングだと思ったら早めに買い替えましょう。
減価償却とは何か
減価償却は、業務で固定資産を使用している人が知っておくべき重要な会計処理です。
ここでは、減価償却の基本的な知識や厨房機器の減価償却の適用例などについて解説します。
減価償却の基本概念
減価償却とは、業務で使用する設備や機器などの固定資産に投資したときの費用を、その資産の耐用年数にわたって分割し、経費計上する仕組みのことです。
業務のために用いられる固定資産は減価償却資産と呼ばれ、確定申告にて適切な方法で償却すれば税金の節約につながります。
減価償却計算の具体的な方法
減価償却の計算方法は、定額法と定率法の2種類があります。
定額法とは、毎年同じ額の償却費を経費計上する方法です。計算が簡単な上、毎年同額を償却するため、将来の計画を立てやすいというメリットがあります。定額法の計算式は以下の通りです。
各年の減価償却費=取得価額×定額法の償却率
定額法の償却率は耐用年数ごとに定められており、国税庁のWebサイトで公開されている減価償却資産の償却率等表で確認できます。
一方、定率法とは年が経過するごとに減価償却費が減少していく計算方法です。資産を取得した初年度の償却費が最も大きく、設備投資直後の税負担をかなり軽減できます。定率法の計算式は以下の通りです。
1年目の減価償却費=取得価額×定率法の償却率
2年目以降は、調整前の償却額が償却保証額(資産の取得価額に耐用年数に応じた保証率を乗じて計算した額)以上か未満かで、計算式が変わります。
【減価保証額以上の場合】
各年の減価償却費=期首未償却残高×定率法の償却率
【減価保証額未満の場合】
各年の減価償却費=改定取得価額×改定償却率
定率法の償却率と改定償却率は、定額法と同じく、国税庁のWebサイトで公開されている減価償却資産の償却率等表で確認できます。
減価償却と税制上の利点
減価償却費は業務上の経費として計上できるため、所得税や住民税を求める際、課税所得額からあらかじめ差し引かれて計算されます。所得税および住民税は課税所得額に一定の税率を乗じて計算するため、経費が増えるほど節税できます。
特に中小企業(従業員が500名以下、出資金等が1億円超の組合等は300万円以下の事業者)の場合、取得価額が30万円 未満の償却資産については、全額即時償却(合計300万 円までが上限)できるという特例が適用されるため、償却資産を取得した年の納税額を大幅に節約することも可能です。
法人の場合、取得した固定資産を減価償却するか否かは任意で決められますが、きちんと経費計上したほうが節税になるため、面倒でも減価償却することをおすすめします。
厨房機器における減価償却の適用例
厨房機器における減価償却の適用例を、定額法と定率法の2パターンに分けて説明します。
まず定額法ですが、例えば、50万円の業務用電気冷蔵庫を定額法で減価償却する場合、耐用年数(6年)の償却率は0.167 です。そのため、50万円×0.167=8万3,500円が減価償却費となり、6年にわたって償却してくことになります。
一方、定率法の償却率と改定償却率は、耐用年数6年(平成24年4月1日以降取得)の場合、償却率が0.333、改定償却率が0.334、保証率が0.09911で す。50万円の業務用電気冷蔵庫を取得した場合の1年目の償却費は、50万円×0.333=16万6,500円。2年目は50万円から16万6,500円を差し引いた33万3,500円に償却率を乗じて、11万1,055円を償却します。
以降、同じ要領で償却していきますが、4年目になると償却費が4万9,407円となり、償却保証額(50万円×0.07909=4万9,555円)を下回ります。よって、6年目からの計算式には改定償却率が適用。4年目の計算式は14万8,371円(4年目の期首未償却残高)×0.334=4万9,555円です。
耐用年数や交換の目安を延ばす方法
厨房機器の法定耐用年数は省令で決まっており、延長はできません。しかし、物理的な耐用年数や交換の目安時期は、日頃の工夫によって延ばすことが可能です。
ここでは厨房機器の物理的耐用年数を延ばすために実践したい習慣を4つご紹介します。
適切なメンテナンスの実施
繰り返しになりますが、厨房機器を長持ちさせたいのなら、適切なメンテナンスが必要不可欠です。機器ごとの取扱説明書に沿って、正しい方法でお手入れし、安全性や衛生面を保ちましょう。
スタッフへの適切な使用法の教育
厨房機器を誤った方法で使用すると、劣化が進んだり、故障したりしやすくなります。そのため、厨房に立つスタッフには、あらかじめ厨房機器の正しい使い方をしっかり指導しておくことが大切です。
例えば、フライヤーの排気口の上に物を置かない(不完全燃焼のリスク)、冷蔵庫の扉は強く閉めない(パッキン劣化のリスク)などの教育を徹底しておけば、厨房機器を長持ちさせると同時に、事故やトラブルの防止にもつながります。
メーカーによる定期点検の活用
冷蔵庫やフライヤー、ガスレンジ、オーブンなどは定期的に業者に点検・メンテナンスを依頼し、必要に応じて部品の交換や内部洗浄などを行ってもらいましょう。メンテナンスの頻度は厨房機器の種類や使用頻度などによって異なりますが、年に数回行うのが理想です。
品質の良い機器の選択
厨房機器を選ぶ際に安さだけを重視すると、耐久性が低い、メンテナンスしにくいなどの問題に直面しやすくなります。
劣化や故障が起こりやすい厨房機器は、頻繁に修理・交換が必要で、長い目で見るとコストがかさみます。
そのため、厨房機器を選ぶ際は耐久性が高く、お手入れもしやすい高品質な機器を選びましょう。
厨房機器をリースにすることも検討しよう
厨房機器は購入する他に、リースで調達するという方法もあります。購入する場合とは異なるメリット・デメリットがあるため、両者を比較し、どちらがより自分のニーズを満たす方法か吟味してみましょう。
メリット
厨房機器をリースする主なメリットは以下3つです。
● 初期導入費を抑えられる
● 定期的に新しい厨房機器と入れ替えられる
● メンテナンスや処分の手間を省ける
リースは月額制の料金体系となっているため、購入する場合に比べて初期導入費を抑えられます。浮いた料金を運転資金に回せば、より安定した経営を行えるでしょう。
また、リースの契約期間終了後、再度更新すると新しい厨房機器との入れ替えが行われるため、常に新品の機器を使い続けられるというメリットもあります。
なお、保証やアフターケアのあるリースなら、途中で不具合や故障が起こっても無料でメンテナンスしてもらえる他、古い機器の処分もリース会社が行ってくれるため、手入れや処分の手間を省けるのもうれしいポイントです。
デメリット
リース契約の主なデメリットは以下の通りです。
● 最終的な支払い額が購入額より高くなるケースが多い
● 厨房機器は自分の物にならない
● 中途解約できない
リース契約は月々の支払い額を抑えられる一方、契約期間を満了しても厨房機器が自分の物にならないところがネックです。
また、最終的な支払い額は一括購入額より高くなるケースが多いため、長い目で見ると購入よりコストパフォーマンスが悪くなる恐れがあります。
さらに、一度契約すると、原則として中途解約はできないという問題もあります。契約途中で廃業した場合は中途解約に応じてもらえるケースもありますが、違約金を徴収される可能性があるため注意が必要です。
まとめ:厨房機器の耐用年数をチェックし、忘れずに減価償却しよう
飲食店で使われる厨房機器の耐用年数は法律で定められており、償却期間中は減価償却することで経費として計上できます。耐用年数を超えると資産としての価値はゼロになり、それ以上経費計上できなくなるため、交換を検討しても良いでしょう。
できるだけ厨房機器を長持ちさせたい場合は、定期的なメンテナンスや正しい使い方の指導を行うことが大切です。
なお、厨房機器は購入する以外にリースを利用するという方法もあります。リースを利用すると初期導入費を抑えられる、常に新しい厨房機器を使える、点検の手間を省けるなどの利点があります。ただし、トータル支払い額が割高になる、自分の物にならないなどのデメリットもあるため、どちらが良いか慎重に検討するのがおすすめです。
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