内装工事の勘定科目はどう処理する?金額・目的別の仕訳を徹底解説! |テナント工房
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2023.3.6
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最終更新日:
内装工事は頻繁に行われることが多いので、費用として計上するときの会計処理にお困りの方も多いのではないでしょうか。
仕訳をするには勘定科目が必要ですが、内装工事に関する勘定科目はそれほど多くありません。そのため、一度理解してしまえば、比較的やりやすいでしょう。
そこで今回は、内装工事に関する勘定科目や、仕訳をするために必要な基礎知識をお話しします。しっかりと理解して、経理業務に役立ててください。
内装工事の費用を仕訳する前の基礎知識
内装工事の会計処理は、勘定科目の仕訳をし、耐用年数を出して、減価償却の計算をするといった流れで行います。そのため、まずは耐用年数と減価償却についての基礎知識をお話しします。
減価償却とは
減価償却とは、機械や備品などを使用していくにつれて、もともとあった価値が時間とともに失われていくのを費用として計上するときに使う勘定科目です。減価償却を行う資産は、減価償却資産といいます。
減価償却資産は、一度に費用として計上することはしません。その資産の耐用年数によって、毎年分割して計上していきます。
なぜ分割して計上するのかというと、一度に大きな金額を費用として計上すると、実際の収益と経費の割合が合わなくなってしまうからです。高額な費用を計上すると、その年が赤字となってしまい、銀行からの融資を受けられなくなってしまうおそれがあります。
そのような事態を避けるべく、減価償却処理を行う必要があるのです。毎年一定額を費用として計上することで、実際の収益とバランスがとれます。
耐用年数とは
耐用年数とは、減価償却資産を使うことができる年数のことです。減価償却資産がどれくらいで価値がなくなるのかを表したもので、この耐用年数をもとに減価償却の計算をします。
耐用年数の決め方は明確なものこそありませんが、耐用年数によって毎年計上する経費が変わってきます。そのため、耐用年数は慎重に決める必要があるでしょう。
内装工事の勘定科目
内装工事の費用を処理する際は、工事の内容と金額に応じて適切な勘定科目を選択しなければなりません。
経費以外の勘定科目は、一度にまとめて計上するのではなく、減価償却処理をして、毎年分割して計上する必要があります。
耐用年数や減価償却の計算方法を間違えると、経費に差が生まれ、確定申告に影響がでます。そのため、仕訳に使う勘定科目の選定や減価償却の計算は、間違えないように注意しましょう。
建物
内装工事の勘定科目は、基本的に建物として仕訳します。しかし、新築であることが条件で、建築付属設備は含まれません。建物として仕訳するものがわからない場合は、建築付属設備を省いて、残りが建物だと判断するとよいでしょう。
建物として仕訳されるものは、以下のようなものがあります。
・防水工事
・ガラス工事
・木工工事
・造作工事
このような、建物に固定されている部分の工事に関しては、建物として仕訳しましょう。
建物付属設備
建物付属設備は、自動で機械が動かしてくれる設備のことをいい、建物に固定されている場合が多いです。備品との区別が付きにくいときは、下記の例を参考にしてください。
・ガス設備:ガスの元栓、配線、ガス機器の配置などが該当
・冷暖房設備:レストランやカフェなど、店舗に設置する冷暖房設備が該当。1台20万円以上であることが条件
・電気設備:電気を使用する際に使う照明の設置工事や、配線工事などが該当
・自動開閉設備:自動ドアのこと。自動ドアの設置工事は建築付属設備に該当
建物付属設備かどうか迷ったときは、自治体や国税庁の公式サイトに載っている耐用年数表を確認してみましょう。勘定科目が建物なのか建物付属設備なのかが、内容別にわかりやすく載っています。
万が一耐用年数表にも記載されていなかった場合は、税務署に問い合わせてみるか、担当の税理士に相談してみてください。ここからは、建物付属設備に分類されるものを具体的に説明していきます。
電気設備(照明設備・通信設備)
電気設備には、照明設備、コンセント設備、通信設備、インターネット配線工事などが含まれます。これらの設備の耐用年数は15年です。
照明設備では、天井埋め込み型の照明器具の設置工事、調光システムの導入、非常用照明の設置などが該当します。通信設備では、LAN配線工事、電話回線工事、インターホン設備の設置などが含まれます。
電気設備として処理する際の注意点は、設備本体の価格だけでなく、設置工事費用も含めて資産計上することです。配線工事や取り付け工事の費用も合わせて建物附属設備として処理します。
給排水・衛生設備・ガス設備
給排水設備、衛生設備、ガス設備の耐用年数は15年です。具体的には、上下水道の配管工事、トイレ・洗面台の設置工事、ガス配管工事などが該当します。
衛生設備では、トイレの便器や洗面台、給湯器、浄化槽などの設置工事が含まれます。これらの設備は建物に固定されており、容易に移動できないため建物附属設備として処理します。
厨房設備がある場合は、シンクの設置工事、排水設備の工事、グリストラップの設置なども給排水設備として処理します。ただし、移動可能な調理器具については工具器具備品での処理となります。
冷暖房・通風・ボイラー設備
冷暖房設備、通風設備、ボイラー設備の耐用年数は13年です。ただし、冷凍機の出力が22キロワット以下のものに限定されており、それを超える大型設備は耐用年数が異なります。
エアコンの設置工事では、天井埋め込み型や壁掛け型を問わず、建物に固定されるものは建物附属設備として処理します。また、ダクト工事や換気扇の設置工事も通風設備として同様に処理します。
床暖房システムの設置工事も冷暖房設備に該当します。配管工事や制御盤の設置費用も含めて、一体として建物附属設備で処理することになります。
その他の建物付属設備
上記以外にも、内装工事で設置される様々な設備が建物附属設備として処理されます。例えば、自動ドアの設置工事は耐用年数6年、エスカレーターは耐用年数17年となります。
防犯設備として監視カメラシステムを設置した場合、カメラ本体と配線工事を含めて建物附属設備として処理します。また、放送設備や音響設備の設置工事も建物附属設備に該当します。
建物附属設備かどうか判断に迷う場合は、その設備が建物に固定されており、建物の機能向上に直接貢献するかどうかを基準に考えます。移動可能なものは工具器具備品での処理となります。
工具器具備品
工具器具備品は、事業で使用する器具や備品のうち、10万円以上で1年以上使用するものを指します。内装工事に関連では、移動可能な家具や設備が該当します。
具体的には、デスク、椅子、書棚、パーテーション、金庫、コピー機、冷蔵庫などが工具器具備品として処理されます。これらは建物に固定されておらず、必要に応じて移動や取り外しが可能な特徴があります。
工具器具備品の耐用年数は、設備の種類によって個別に定められています。例えば、事務机や椅子は15年、金庫は20年、コピー機は5年となっています。
建物附属設備との区別が重要なポイントです。同じエアコンでも、天井に埋め込まれて取り外しが困難なものは建物附属設備、壁に後付けで設置して移動可能なものは工具器具備品として処理します。
消耗品費
消耗品費は、取得価額が10万円未満の物品や、使用期間が1年未満で消耗する物品を購入した際に使用する勘定科目です。内装工事関連では、少額な工事費用や材料費が該当します。
具体的には、壁紙の部分的な張り替え、ペンキの塗り直し、電球の交換、清掃用品の購入などが消耗品費として処理できます。これらは取得時に全額を経費として計上できます。
消耗品費として処理できる判断基準は明確で、取得価額が10万円未満であることが条件です。たとえ内装工事であっても、この基準を満たせば消耗品費として一括経費計上が可能です。
ただし、複数の小額工事を組み合わせて一つの大きな工事とする場合は注意が必要です。個別には10万円未満でも、全体として10万円以上になる場合は資産計上する必要があります。
【ケース別】内装工事の仕訳例
内装工事の仕訳は、工事の目的や物件の種類によって処理方法が異なります。ここでは、実務でよく発生する3つのケースについて、具体的な仕訳例を示しながら解説します。
仕訳を行う際は、工事の内容を詳細に確認し、適切な勘定科目を選択することが重要です。また、消費税の取り扱いや源泉徴収の有無についても注意が必要です。
各ケースの仕訳例では、金額や勘定科目だけでなく、判断の根拠や注意点についても説明します。
テナント入居時の内装工事の仕訳
賃貸店舗に新規入居する際の内装工事は、賃貸物件の内装工事として処理します。この場合、合理的に見積もった耐用年数での減価償却が一般的です。
例えば、新規店舗の内装工事として500万円を支払い、内訳が床工事200万円、壁工事150万円、電気工事100万円、その他設備50万円の場合を想定します。
電気工事は建物附属設備として15年で償却し、その他は建物として12年(合理的見積耐用年数)で償却します。仕訳は以下のようになります。
建物 400万円 / 普通預金 500万円 建物附属設備 100万円
この処理により、建物附属設備部分は短期間で償却でき、節税効果が期待できます。工事内容の区分が明確でない場合は、工事業者に明細の提供を依頼することが重要です。
自社ビルの改修工事の仕訳
自社所有ビルの改修工事では、工事の内容が資本的支出に該当するか修繕費に該当するかの判断が重要です。建物の価値向上や機能向上を目的とする工事は資本的支出として資産計上します。
例えば、築15年の自社ビル(鉄筋コンクリート造、耐用年数50年)の改修工事として800万円を支払った場合を考えます。工事内容は空調設備の更新400万円、内装のリニューアル400万円です。
空調設備は建物附属設備として13年で償却し、内装工事は建物として残存耐用年数で償却します。残存耐用年数は「(50年-15年)+15年×0.2=38年」となります。
建物 400万円 / 普通預金 800万円 建物附属設備 400万円
改修工事が修繕費に該当する場合は、支払時に全額を経費計上できます。資本的支出と修繕費の判断基準については、工事の目的と効果を慎重に検討する必要があります。
退去時の原状回復工事の仕訳
賃貸物件からの退去時に行う原状回復工事は、原則として修繕費で処理します。原状回復工事は、物件を入居前の状態に戻すことが目的であり、資産価値の向上には該当しないためです。
例えば、事務所の退去に伴い原状回復工事として150万円を支払い、敷金100万円と相殺して残額50万円を現金で支払った場合の仕訳は以下のようになります。
修繕費 150万円 / 敷金 100万円 現金 50万円
原状回復工事と同時に、既存の内装工事資産がある場合は除却処理も必要です。未償却残高がある資産については、固定資産除却損として処理します。
原状回復工事の範囲については、賃貸借契約書で確認することが重要です。通常の使用による劣化は貸主負担、借主の故意過失による損傷は借主負担となることが一般的です。
節税効果を高める2つのポイント
内装工事の会計処理では、適切な処理方法を選択することで合法的な節税効果を得ることができます。特に重要なのは、勘定科目の正しい区分と、賃貸物件での耐用年数の活用です。
「建物」と「建物附属設備」を正しく分ける
建物と建物附属設備の正しい区分は、節税効果を高める最も重要なポイントです。建物附属設備は建物本体よりも短い耐用年数が設定されており、早期の費用化が可能になります。
例えば、鉄筋コンクリート造の事務所(耐用年数50年)で内装工事を行った場合、電気設備部分(耐用年数15年)を建物附属設備として区分することで、大幅な節税効果が期待できます。
建物附属設備として処理できる工事の見極めが重要です。電気設備、給排水設備、空調設備、昇降機設備などは明確に建物附属設備として処理できます。
賃貸物件の耐用年数の考え方
賃貸物件の内装工事では、合理的に見積もった耐用年数を活用することで、自社所有建物よりも短期間での償却が可能です。これにより、年間の減価償却費を増加させ、節税効果を得ることができます。
耐用年数の設定では、工事内容、使用材料、業種の特性などを総合的に考慮します。飲食店や美容室のように内装の劣化が早い業種では、10年程度の短い耐用年数が合理的と判断される場合があります。
一般的な事務所や店舗では、12年から15年程度の耐用年数が適用されることが多いです。ただし、高品質な材料を使用した工事や、特殊な用途の内装では、より長い耐用年数が適切な場合もあります。
まとめ
内装工事の勘定科目は、工事内容と金額に応じて「建物」「建物附属設備」「工具器具備品」「消耗品費」を適切に使い分けることが重要です。
勘定科目を間違えると、確定申告の際に間違った報告をすることになってしまうため、勘定科目はしっかり覚えるようにしましょう。
また、減価償却の計算も重要な部分です。減価償却を間違えてしまうと、費用として計上する金額が変わってくるため、あとあと仕訳を修正しなくてはいけなくなります。決算前に手間が増えてしまうので、間違えないように注意してください。





