レストランの厨房の種類は?設備の選び方や配置する際のコツも解説


レストランの肝ともいえる厨房には、さまざまな種類や設備があります。レストランで提供する料理や経営方法によって、適している設備は異なります。レストラン経営は、厨房を作るところから成功するかどうかが決まるといってもよいでしょう。

営業に適した厨房を手に入れるには、複数ある種類や設備などの知識を知っておかなくてはなりません。そこで、レストラン厨房を選ぶ際に必要な知識をまとめました。


レストランの厨房の種類

レストランの厨房には3つの種類があり、それぞれメリットとデメリットがあります。まずは厨房の種類を押さえましょう。

オープンキッチン

オープンキッチンは調理する様子が間近で見られるタイプのキッチンです。顧客との距離が近く、親しみやすい・活気ある雰囲気を伝えられます。

オープンキッチンは、お寿司屋さんや居酒屋・バーなどによくあるタイプです。調理中の様子を見ながら料理を待てるため、鉄板料理など作る過程を楽しめるレストランでも活用されています。「調理テクニックを見てもらいたい」「衛生面でも安心して食べてもらいたい」などの要望があるなら、おすすめのキッチンです。

メリット

オープンキッチンは厨房と客席が近い分、調理と配膳を兼任できます。規模の小さいお店でうまく厨房を作れれば、ひとりでレストランを運営することも可能です。少人数でも運営できる厨房を探しているならピッタリといえます。

またオープンキッチンは顧客との距離が近く、コミュニケーションがとりやすいのも特徴です。料理をしながら顧客の様子をうかがえるため、料理を出すタイミングも的確にできます。コミュニケーションでリピーターを確保したいなら、オープンキッチンはおすすめのキッチンです。このほか、調理過程をショーとして楽しむ要素を入れたい場合にも適しています。


デメリット

デメリットは、厨房の隅から隅まで顧客に見える点があげられます。ただ清潔にするだけでなく、ディスプレイにもこだわらなくてはなりません。内装や調理器具も顧客の目を楽しませる要素となります。本来ならお金をあまりかけなくてもよい部分にも資金を割く必要があるのは、デメリットといえるでしょう。

厨房を使うと、調理による汚れが発生します。オープンキッチンは客席と厨房が近い分、調理中の汚れが客席にも及ぶことが多いです。常に心地よい状態で利用してもらうには厨房はもちろん、客席の掃除もこまめにしなくてはなりません。

また、常に厨房が顧客の目に留まる分、教えながら料理するのが難しいです。新人教育の際、開店前や後に時間が取れないと、料理を教えるペースが遅くなってしまいます。


クローズドキッチン

クローズドキッチンはオープンキッチンとは逆に、客席と厨房を完全に分けているタイプです。ファミリーレストランで採用されることが多く、なじみ深いキッチンでもあります。

客席と厨房がお互い目に入らない分、厨房では調理に、客席では食事にそれぞれ集中できます。打ち合わせなど、顧客の目や耳に入ると困る作業を厨房でできる便利な点もあります。

メリット

クローズドキッチンは、調理中の音や熱が客席に届かない仕組みです。その分客席を自由にレイアウトできます。「高級感がほしい」「インテリアにこだわりたい」などの場合におすすめです。オープンキッチンのように調理中の汚れが客席に付着しないので、掃除も楽になります。

また、個客の様子を気にせず調理に集中できるのも大きなメリットといえるでしょう。厨房も顧客の目に留まらない分自由にできるため、費用を抑えた作りにする・調理しやすい道具を揃えるなど、環境を自由に決めやすいです。

「客席や厨房のレイアウトをこだわりたい」「調理に集中できる環境を作りたい」などの場合にクローズドキッチンはおすすめです。


デメリット

クローズドキッチンは客席と離れている分、顧客の様子がわかりにくいです。料理を提供するタイミングを見極めにくいため、いつ料理を出したらいいかわからなくなる場合があります。

たとえば、バーのようにお酒とおつまみのタイミングを合わせる必要がある飲食店だと、料理の提供が少々難しくなります。

配膳する人と調理する人をそれぞれ分けて雇用すればある程度は改善できますが、人件費がかかります。顧客に快適に利用してもらうためには、人件費が必要なのもクローズドキッチンのデメリットといえるでしょう。

また人の目が届かないため、衛生管理がおろそかになりやすいです。クローズドキッチンを利用する際には、衛生管理にも気を付けておきましょう。


セミオープンキッチン

セミオープンキッチンは、オープンキッチンとクローズドキッチンのよいところを組み合わせたものです。厨房の一部だけを顧客に見える位置やガラス張りにすることで、クローズドキッチンの機能をもちながらオープンキッチンの効果も得られます。

ふたつのキッチンのよいところ取りと聞くとメリットがたくさんあるように思えますが、デメリットも引き継いでいます。セミオープンキッチンは「レストランをどういうかたちで運営するのか」や「どのような機能を厨房に望むのかに」よって、活かせるかどうかが決まるタイプです。

セミオープンキッチンを採用する際は、メリット・デメリットをよく考慮したうえで決定するのが重要です。

メリット

セミオープンキッチンは、厨房の一部を顧客に見せられます。たとえば食材を焼く過程や盛り付けなどを、顧客から見える状態にできます。オープンキッチンと同様の設計にするだけでなく、ガラス越しにして客席に汚れなどが飛ばないようにすることも可能です。

一部だけオープンにして、あとは客席から見えないようにしておけば、内装などにこだわる必要がありません。新人教育もしやすくできるため、設計次第で使いやすい厨房を手に入れられます。


デメリット

デメリットとしては、設計に気を付けないとせっかくのメリットが活かせなくなる点です。オープン部分にこだわりすぎて、厨房内の動線を阻害してしまう恐れもあります。このように、ひとつの機能にこだわると別の機能に影響が出てしまいます。

セミオープンキッチンは設計次第で厨房の機能が変わるため、さまざまな要素に注目しなくてはなりません。また、ほしい機能を厳選する必要もあるでしょう。ほかのキッチンよりも気を付けなくてはならない部分が多いのも、セミオープンキッチンのデメリットといえます。


飲食店の厨房レイアウト

飲食店の厨房は、複数のレイアウトがあります。提供する料理や営業スタイル・レストランのある物件などにより、適するレイアウトは異なるため注意が必要です。

適切なレイアウトを選ぶには、代表的なかたちを知っておく必要があります。飲食店の厨房レイアウトによくあるかたちをご紹介します。

直線型

直線型とは、シンクやガスコンロが一直線に並んでいるタイプです。オープンキッチンでよく採用されているレイアウトでもあります。レストランを運営する際、必要最低限の設備が置かれていることが多いです。

小さいお店によく採用されているタイプで、少人数経営のお店に適しています。お店の広さがあまりない場合や、必要最低限の設備でも提供できるお店におすすめです。


L型

L字型も直線型同様、広さがあまりない店舗や少人数経営の飲食店に採用されているレイアウトです。L字型はどちらかというと、厨房の面積を広く取りたい場合に採用されます。

調理する人の移動が最小限で済ませられる分、料理を素早く提供できるかたちです。スピーディーさを求められる場合におすすめといえます。


二列型


二列型は、前と後ろに作業スペースがあるタイプのレイアウトです。十分なスペースが取れる店舗で採用されています。ファミレスの大手チェーン店や、ホテルのレストランなど、一度に大量の料理を作らなくてはならない店舗と相性がよいかたちです。

大型のレストラン、とくに顧客をたくさん迎える場合は、二列型を採用できないか検討してみましょう。


アイランド型


アイランド型とはメイン厨房で料理を作り、カウンターなどに隣接している場所で仕上げるタイプのレイアウトです。牛丼チェーン店や、焼き鳥を扱う居酒屋などに採用されているケースが多いです。オープンキッチンの演出にも活用されています。

料理を作る過程を見せたい場合や、デザイン性にこだわりたい場合におすすめのレイアウトです。



レストランに必要な厨房設備と選び方

厨房を構成するのは、キッチンの形状だけではありません。設備も重要な要素です。次は厨房を構成する設備と選び方を解説します。


製氷機

製氷機とはその名の通り、氷を作る機械です。業者でも氷は販売していますが、多くの飲食店では製氷機を採用し、自分で氷を作っています。製氷機にはさまざまなタイプがあり、機能ごとに選択できます。

アンダーカウンタータイプと呼ばれるものは、天板を作業スペースにできます。作業スペースが広くない場合におすすめです。また、スタック音タイプは製氷量を調節できる特徴があり、顧客の状況にあわせて氷を用意できます。製氷機にかかる水道代や電気代を節約したい場合にもおすすめです。

バーチカルタイプは腰を屈まずに取り出せるのが魅力で、スライド扉タイプは横開きでスペースを取りません。これらのタイプのように、動線を邪魔しない機能が搭載されたものもあります。

製氷機はタイプによって製氷能力も違います。16席程度なら25kgタイプ、50席程度なら75kgタイプなど、座席数により適切な量が決まっているため、導入の際は店舗の規模にあわせて選びましょう。


調理台

調理台は文字通り調理するための台で、飲食店には必須の設備です。下には調理器具などを収納できます。調理台を選ぶ際は、作業台の下になにを収納するかで選びましょう。収納部分はすのこ板付き・引き出しつき・引き戸付きなどさまざまな種類があります。

また、調理台選びで重要なのがサイズです。サイズが大きすぎると厨房に入れられない、動線の邪魔になるなどの問題が発生します。一方で、小さいと調理しにくくなるなど別の問題も発生するため注意が必要です。

調理台を選ぶときは、収納機能とサイズに注目しながら選びましょう。困ったときは、厨房の内装業者や、調理台を販売する業者に相談するのもおすすめです。


食器棚

飲食店の食器棚は、保健所の規定を守らなくてはなりません。規定は店舗のある地域を管轄する保健所ごとに異なるため、事前に確認しましょう。扉付きでほこりが入らず掃除しやすい・防錆加工がされている・食器をすべて収納できるなどの条件がよく提示されます。

レストランのインテリアとして食器を使いたい場合にも、収納器具である食器棚には注意しましょう。判断できないときは、管轄の保健所に相談するのもよい方法です。


冷蔵庫・冷凍庫

食品を衛生的に管理するための冷蔵庫や冷凍庫もレストランに必要な設備のひとつです。キッチンで使う場合は温度計がついているものを選ぶと、食品を安全に管理できます。選ぶときは容量に注目しましょう。

冷蔵庫や冷凍庫は、大きければ大きいほど電気代がかかります。食材管理のためにある程度は余裕が必要ですが、大きすぎるものを選ぶとかえって損をしてしまいます。

また、小さい冷蔵庫は価格が安く電気代もかかりませんが、材料を管理しきれないと仕入れ回数が増えます。上手く食材を管理しなければ、かえって出費につながる可能性も高いです。

冷蔵庫や冷凍庫を選ぶ際は、適切な容量のものを選択しましょう。座席数や料理を提供するペースなどから、ある程度必要な容量は想像できます。自分の店にはどれくらいの大きさが適切かをよく考えましょう。


コールドテーブル

コールドテーブルは、作業台の機能も兼ねている冷凍庫や冷蔵庫です。作業台の下に食材を保存できるため、スペースを有効活用しつつスムーズに作業できます。

コールドテーブルは店舗の回転率を高め、料理を最適な状態で提供するのに必要な設備です。とくに、作業スペースが限られる小規模店舗に適しています。冷蔵庫や冷凍庫を導入する際、スペースの関係で満足な大きさのものを入れられない場合は、コールドテーブルの導入も視野に入れましょう。


ガスレンジ

家庭でも調理で使われているガスレンジですが、業務用のものは家庭用とはまた違ったものが多いです。設置場所のサイズ・火力・五徳のサイズがそれぞれ異なるため、キッチンに適切なものを導入しましょう。

とくにガスレンジのサイズは作業効率や動線に影響します。大きいほうが効率的に料理できますが、大きすぎると動線を妨げるため、せっかくの効率が無駄になる場合もあります。作業効率を維持しつつ、動線を妨げないサイズを注意深くチェックしましょう。


シンク

シンクも食器棚と同様に、保健所の規定を満たさなくてはなりません。シンクは層の数により分かれていますが、最低でも2層を選びましょう。魚介類用の舟形シンク・そばを冷やすためのそばシンクなどもあります。

シンクを選ぶ際は、まず保健所の規定を確認して、用途にあわせたタイプを選びましょう。


厨房設備を配置する際のコツ

最後に、設備を配置する際のコツを解説します。初めてキッチンの作成に着手する方でも、これからご紹介するコツを意識して考えれば、働きやすい厨房を手に入れられます。ほかの知識と合わせて、しっかり押さえておきましょう。


調理のしやすさを考慮する

まず注目してほしいのが調理のしやすさです。料理を作り、提供するまでの流れを意識しましょう。具体的には冷蔵庫などから材料を取り出し、調理した後顧客へ提供する流れです。

一連の流れをスムーズにできるようなレイアウトと設備配置を意識する必要があります。冷蔵庫やガスコンロがひとつの動線上にないといった事態を招かないようにしましょう。


厨房内の人の動きを考慮する

意識するのは、調理時の動線だけではありません。片付けや配膳の動線にも注目しましょう。片付けや配膳する人の動線と調理をする人の動線が重なると、お互いが邪魔になり、効率的な動きが難しくなります。

冷蔵庫やガスコンロは調理をする人のためにひとまとめにしつつ、食器棚やシンクなどの片付けにかかわる設備は、調理に必要な設備とは別のところに配置します。片付けスペースは顧客から不快に映る場合もあるため、客席から見えない位置に配置するのが基本です。

実際に料理を提供し、配膳・片付けする際に動きやすいかをシミュレーションしてみるとよいでしょう。現在稼働している店舗の厨房写真などの資料があれば、参考にするのもおすすめです。


掃除のしやすさを考慮する

厨房内は常に清潔な状態に保たなくてはなりません。こまめに掃除するのはもちろんですが、掃除がしにくい環境だと清潔な状態を維持するのは難しいです。キッチン内のレイアウトや設備は、掃除しやすいものを選びましょう。

また厨房設備の中には、汚れにくい素材を使って作られたものや、清潔な状態を保つ機能が搭載されているものも多いです。こうした設備を積極的に導入するのもよいでしょう。


インフラ設備の位置を考慮する

キッチン設備の配置は、インフラの影響を大きく受けます。水道・ガス・ダクト・電気・グリーストラップの位置は先に決まっているため、それぞれの位置にあわせて設備を配置しなくてはなりません。確認を怠ると、設備の移動や増築が必要になります。

インフラ設備の確認は、動きやすいキッチンを作るだけでなく、店舗準備に余計な出費を発生させないためにも重要な要素です。インフラは必ず確認してください。


従業員やお客の邪魔にならないよう考慮する

設備が適切なサイズよりも大きいと、従業員の動線を阻害します。効率的に動けない厨房では、料理を提供するのにも影響が出ます。レイアウトや設備の配置は、従業員が調理・配膳に集中できるものにしなくてはなりません。

また、設備が邪魔で顧客が動きにくい、食事以外の余計な動きをしなくてはならないなどの事態が発生すると、店舗の評判にも影響を与えるでしょう。顧客が周りを気にせず食事ができる環境づくりにも注意が必要です。

設備やレイアウトを考える際は、従業員や顧客の動きを邪魔しないか考えながら設置しましょう。



まとめ

レストランの厨房はさまざまで、設備配置の仕方も無数にあります。経営するレストランにあわせて、適切な形を選択しなくてはなりません。そのためには、厨房設備の選び方や配置方法を知っておく必要があります。

レストランのタイプや配置について困ったときは、内装業者や設備業者に相談しましょう。相談すればよいアイデアをもらえる可能性があります。迷ったときは、積極的に相談や質問をしてください。


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