ジムの内装デザインの成功ポイント!内装費用についても解説


経済産業省の調べによると、フィットネスクラブの利用者数は2020年から4年連続で増加しています(※)。近年は身体づくりに関心のある若い男女だけでなく、健康意識の高い高齢女性の利用率の高さも目立ちます。
ジムやフィットネスクラブの集客を成功させるには、ターゲットを明確化し、主要な顧客層に合った内装デザインを取り入れることが大切です。また魅力的な設備やマシンを設置することで、利用者のリピート率向上につながるでしょう。

この記事では、スポーツジムを開業する際の内装デザインのポイントや、集客につながる内装デザインの共通点、内装工事にかかる費用の目安について解説します。

※ 経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」


スポーツジムの内装デザインが重要な理由

スポーツジムの集客において、内装デザインが重要とされる理由は3つあります。

  • 利用者のジム選びの決め手になりうるから
  • 利用者のモチベーション向上につながるから
  • ジムのブランディングとしての役割があるから

利用者のジム選びの決め手になりうるから

利用者はスポーツジムやパーソナルトレーニングを利用するかどうかを、さまざまな基準で決めています。

●他のジムと比べて料金が安いか
●設備やマシンが充実しているか
●トレーナーの質が高く、プログラムが充実しているか
●立地やアクセス面で優れているか
●24時間営業や予約システムがあり、利用しやすいか
●清潔感があって居心地の良い環境か

ジムの内装デザインに力を入れることで、ジム選びの決め手が増え、集客力が高まるでしょう。特にジムはさまざまな方が出入りするため、清潔感をキープできるような内装デザインにすることが大切です。


利用者のモチベーション向上につながるから


ジムの内装デザインは、利用者のモチベーションにも影響すると言われています。色彩心理学という分野によって、色や明るさは人の心理を変化させることが分かっているからです。明るくポジティブな気持ちになれる空間設計をすることで、利用者が「また来たい」と思えるような内装デザインにつながるでしょう。

スポーツジムの収益モデルでは、会員数を増やし、会費収入を最大化することが重要です。実際に経済産業省の調べによると、フィットネスクラブの売上高のうち、会費収入が約92%を占めています(※)。
長くジムに通いつづけてくれるリピーターを増やすためにも、利用者のモチベーション向上につながる内装デザインを取り入れましょう。

※ 経済産業省「長期データ(XLSファイル参照)」


ジムのブランディングとしての役割があるから

ジムの内装デザインには、他の店舗との差別化を図る「ブランディング」としての役割もあります。近年はInstagramなどのSNSを通じて、ワークアウトの様子を積極的に投稿する利用者が増加しました。ジムの内装デザインにこだわることで、SNS上の拡散による宣伝効果が期待できるでしょう。
また内装デザインには、店舗のブランドイメージを形成し、特定のターゲットに強く訴求する効果もあります。例えば、女性専用のジムの場合、パステルカラーなどのやさしい色合いを取り入れることで、女性の利用者から好印象を得られるでしょう。



スポーツジム開業で失敗しない内装デザインの作り方

スポーツジムの内装デザインで失敗しないためには、以下の3点を意識することが大切です。

  • ジムのターゲットやコンセプトを明確化する
  • ジムのターゲットに合った物件を選ぶ
  • 施工業者としっかりコミュニケーションを取る

ジムのターゲットやコンセプトを明確化する

ジムの内装デザインを決める前に、ターゲット(想定する顧客層)や、コンセプト(どのようなジムにしたいか)を明確化しましょう。
近年のトレンドとなっているのが、以下のような形態のスポーツジムです。

●完全個室制でパーソナルトレーニングの提供を中心としたジム
●女性向けのプログラムを提供する女性専用のジム
●ICTを活用し、スマートフォンやクラウドと連携できるジム

ジムのターゲットやコンセプトに基づき、内装デザインの方向性を決めることが大切です。例えば、専門性の高いジムを開業する場合は、トレーニングによる体の変化が分かりやすいよう、大きな鏡を設置したり照明(ライティング)にこだわったりするとよいでしょう。


ジムのターゲットに合った物件を選ぶ

ジムの内装デザインでは、物件選びも大切です。ジムのターゲットやコンセプトに適していない物件を選ぶと、内装工事にかかるコストが増えるだけでなく、思い描いた内装デザインを実現できなくなるかもしれません。
特に注意したいのが、床の強度や耐久性です。ジムには重量のある機材やマシンを設置するため、耐荷重が低いと経年劣化によるトラブルが発生する可能性があります。耐荷重の問題は、内装工事では解決することが難しいため、スポーツジム開業に適した物件を選びましょう。


施工業者としっかりコミュニケーションを取る

スポーツジム開業で失敗しないためには、施工業者の担当者とこまめにコミュニケーションを取ることも大切です。内装工事を施工業者に任せきりにすると、完成イメージがうまく伝わらず、希望の仕上がりにならない可能性もあります。

また実現したいコンセプトを伝えることで、専門家の目線からアドバイスをもらうことも可能です。特にジムの開業では、消防法や建築基準法、都市計画法、公衆浴場法など、さまざまな関連法規を守って内装工事を行う必要があります(※)。施工業者としっかり話し合って内装デザインを決めていくことが大切です。

※ 独立行政法人 中小企業基盤整備機構「フィットネスクラブ」



成功する内装デザインの共通点は?5つのポイントを紹介

成功しているスポーツジムの内装デザインには、以下のような共通点があります。

  • 防音対策がしっかりしている
  • 安全性・耐久性が考慮されている
  • 換気対策によって快適な温度が保たれている
  • 動線を意識し、利用しやすいレイアウトになっている
  • 清潔感があり、臭いがこもらないよう工夫されている

防音対策がしっかりしている


まず大切なのが、ジムの防音対策です。
ジムはトレーニング機材を使用する音や利用者の話し声など、騒音が発生しやすい場所です。特に複合施設のテナントや、マンションの一室でジムを開業する場合、近隣の迷惑にならないよう防音対策に力を入れる必要があります。

主な防音対策には、遮音性や吸音性、防振効果のある防音マット(ラバーマットなど)の導入が挙げられます。壁や天井の改修が可能な場合は、防音性が高い下地材を施工するとよいでしょう。


安全性・耐久性が考慮されている

ジムの利用者が怪我をしないように、安全性・耐久性を考慮して内装工事を行う必要があります。例えば、利用者がすべりにくく、バーベルなどを落としても傷がつきにくいゴム床材の導入がおすすめです。
特にシニア層をターゲットとしたフィットネスクラブの場合、60歳以上の利用者の骨折などの怪我が増加傾向にあるという調査もあります(※)。運動中に事故が起こることを想定し、利用者の安全を意識して内装デザインを考えましょう。

※消費者庁「高齢者のフィットネスクラブ等での事故が増えています!」p2


換気対策によって快適な温度が保たれている

利用者にとって居心地の良いジムにするには、換気対策が欠かせません。ジムは熱気がこもりやすいため、空調・換気設備を導入し、室内の温度を快適に保てるようにしましょう。
また利用者が激しい運動を行うと、室内の二酸化炭素濃度が高まり、不快感やめまい、眠気などの症状が起こる可能性があります。スポーツジムを開業する場合は、通常よりも換気効率が優れ、二酸化炭素濃度を調節できる高機能換気設備の導入が必要です。


動線を意識し、利用しやすいレイアウトになっている

リピーターが多いジムに共通するのは、利用者の動線を考慮し、レイアウトを最適化しているという点です。レイアウトが人の流れに合っていないと、利用者がトレーニングのたびにあちこち移動しなければならず、利便性が大きく低下します。
一般的なスポーツジムでは、トレーニング種目ごとにエリアを決め、できるだけ無駄な移動が発生しないように動線づくりを行います。また高重量を扱う機器(パワーラックやスクワットラックなど)や、他の利用者と接触する危険性が高いフリースペースは、ジムの奥に配置するとよいでしょう。


清潔感があり、臭いがこもらないよう工夫されている

スポーツジムで問題となりやすいのが、利用者の汗などによる臭いです。換気対策に力を入れ、空気がこもらないように循環させることで臭い対策につながります。
特に女性専用のジムの場合、清潔感を重視する利用者が多いため、臭い対策は欠かせません。脱臭効果の高い換気設備を導入し、定期的に外気清浄フィルターを取り替えましょう。



ジムの内装工事にかかる費用を項目別に紹介


ここでは、ジムの内装工事にかかる費用の目安を項目別に紹介します。

天井や壁などの内装工事は300万円前後

天井や壁などの内装工事にかかる費用の目安は、300万円 前後です。
主な工事内容としては、天井や壁、床のクロス貼りや塗装が挙げられます。グレードの高い壁材・床材を採用する場合は、相場よりも工事費用が高くなるでしょう。また防音対策のための補強工事を行う場合も、余裕を持って資金を準備しておく必要があります。


電気・空調などの設備工事は10万円前後

電気・空調などの設備工事にかかる費用の目安は、10万円 前後です。主に照明を設置するための電気配線工事や、空調・換気設備の取り付けに費用がかかります。
トイレやシャワールームなどの設備がない物件の場合、水道設備工事も必要です。水道設備工事にかかる費用の目安は、70万円 前後です。大型ジムの場合、プールやバス、サウナなどの設備も必要となるケースが多く、水回りの工事に多額の費用を要するでしょう。


間仕切りやカウンターなどの建具工事は70万円前後

建具(たてぐ)とは、施設の開口部や間仕切りに用いる設備を指します。スポーツジムの場合、入口の自動ドアや窓(アルミサッシ)、パーテーション、個室やシャワールームのドア、受付のカウンターなどが建具に相当します。
通常、天井や壁などの内装工事が終わってから、建具を取り付ける工事を行うことが一般的です。建具工事にかかる費用の目安は、70万円 前後です。ジムの個室数が多く、室内のドアの数が増えるほど、工事費用が高くなる傾向にあります。


マシンなどの機材の購入にも費用がかかる

マシンなどの機材の購入費用は、開業するジムの規模に応じて変わってきます。例えば、小規模なパーソナルジムの場合は、家庭向けの機材でも十分なため、設備投資を抑えられるでしょう。
トレーニング機材の購入費用は減価償却が可能なため、開業年度に全額を経費計上する必要はありません。法定耐用年数に基づき、毎年分割して必要経費にすることで、法人税や所得税の支払いを抑えられます。



内装工事にかかる費用を抑える4つのコツ

ジムの内装工事にかかる費用を抑えるコツは4つあります。

  • 内装デザインにこだわりすぎない
  • ジムの個室を増やしすぎない
  • 複数の施工業者から相見積もりを取る
  • 動線を意識し、利用しやすいレイアウトになっている
  • 清潔感があり、臭いがこもらないよう工夫されている

内装デザインにこだわりすぎない

開業資金に余裕がない場合は、内装デザインにこだわりすぎないようにしましょう。特にスポーツジムの場合、マシンや機材の購入にも多額の費用がかかるためです。
ただし、内装材などのグレードを下げすぎると、経年劣化が早まり、修繕やメンテナンスの費用がかえって高くつく可能性もあります。内装デザインは利用者のモチベーションにも影響するため、コストと品質のバランスが取れた施工計画が大切になってきます。


ジムの個室を増やしすぎない

ジムの個室数が増えると、壁や床の内装工事や、開口部の建具工事、電気配線工事などにかかる費用が増加します。
特に完全個室制のパーソナルジムを開業する場合、あまり個室を増やしすぎないようにすることでコストカットにつながります。個室数を制限することで、利用者1人当たりのスペースが増え、トレーニングしやすくなるという効果も期待できるでしょう。


複数の施工業者から相見積もりを取る

内装工事を依頼する場合は、最初に見つけた施工業者に決めるのではなく、相見積もりを取るようにしましょう。相見積もりを取れば、複数の施工業者の間で競争原理が働くため、工事費用の値下げが期待できるからです。

また見積内容を比較することで、その地域の工事費用の相場を把握し、提示された金額に妥当性があるかどうかを判断できます。悪徳業者に騙されないためにも、複数の施工業者に見積もりを依頼することが大切です。


ジムの内装工事に強い施工業者に相談する

施工業者によって、得意とする内装デザインが異なります。例えば、飲食店の内装デザインに強い施工業者もあれば、病院やクリニックの内装デザインを専門としている施工業者もあります。
内装工事の費用を抑えたい場合は、過去の施工実績を調べ、スポーツジムやフィットネスクラブの受注件数が多い業者を探しましょう。豊富な経験やノウハウを生かし、コストダウンにつながるさまざまなアイデアを提供してくれるでしょう。



ジムの種類別に考える内装デザインのポイント

ここでは、スポーツジムの種類別に内装デザインのポイントを紹介します。

  • フィットネスクラブ
  • パーソナルジム
  • ブティックジム
  • 格闘技ジム

フィットネスクラブ

フィットネスクラブは、老若男女さまざまな利用者が出入りします。まずは多くの利用者がスムーズに出入りできるよう、動線を考慮したレイアウトを設計することが大切です。
また高齢者や子ども、障がいのある方など、多様な顧客層が利用することを想定し、ユニバーサルデザインを取り入れるとよいでしょう。トレーニング機器の中には、体力が低下している方や、体に障がいや麻痺がある方でも利用できるものがあります。
総合型のフィットネスクラブをコンセプトにする場合は、プールやランニングコース、サウナ、バスなど、さまざまなニーズを持った顧客が利用できる設備を導入しましょう。


パーソナルジム

トレーナーからマンツーマンで指導を受けるパーソナルジムは、近年人気が高まっている運営形態です。パーソナルレッスン中のプライバシーを守るため、防音性の高い個室を設けることをおすすめします。トレーニングルームの他は、更衣室やシャワー室など、最低限の設備のみで営業可能なため、内装工事にかかる費用を抑えられるでしょう。


ブティックジム


ブティックジムとは、ブティックスタジオとも呼ばれ、アメリカで生まれた新しい運営形態です。少人数制を基本としており、「向上心のある女性向けのヨガスタジオ」「HIIT(インターバルトレーニング)専門のクラス」など、特定のニーズや価値観を共有する利用者をターゲットとしています。
利用者には富裕層が多いため、ラグジュアリーな設備や、おしゃれで非日常感のある内装デザインを取り入れることが一般的です。


格闘技ジム

格闘技ジムとは、ボクシングやマーシャルアーツなど、格闘技の要素を取り入れたエクササイズを行うスポーツジムです。
格闘技ジムの開業では、リングの製作やサンドバッグの取り付け、専用のマットの設置など、特殊な内装工事が必要です。格闘技ジムの受注実績が豊富な施工業者に内装工事を依頼しましょう。



まとめ:スポーツジムの内装デザインによって集客力が変わる

スポーツジムの集客力に影響するのが、受付やトレーニングルームなどの内装デザインです。内装デザインの良し悪しによって、利用者の受ける印象や、ワークアウトへのモチベーションが変わってきます。利用者が「また来たい」と思えるようなジムにするには、内装デザインに力を入れることが大切です。
フィットネスクラブやパーソナルジムなど、ジムの種類によって求められる内装デザインが異なります。施工業者と相談しながら、ターゲットやコンセプトに合った内装デザインを取り入れることが大切です。


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