おしゃれなトイレがリピーターのカギ?飲食店のトイレ空間づくり

飲食店の設計・デザインを考えるとき、メインとなる食事スペースにばかり意識が向いていませんか?顧客満足度をさらに上げるには、トイレの空間づくりも大切な要素のひとつです。

そこで今回は、おしゃれなトイレがリピーター獲得に効果的な理由や、お客様がトイレ空間に求めるポイント、ターゲット層別のポイントなどをご紹介します。

おしゃれで居心地のよいトイレ空間づくりにお役立てください。

トイレがリピーター獲得に効果的な理由

メインとなる食事スペースだけでなく、トイレの内装やデザインにもこだわることは、また来たくなるお店づくりに役立つことが期待できます。トイレがリピーターの獲得に効果的な理由をご紹介します。

トイレは冷静になる個室空間

トイレはパーソナルスペースであり、ひとりになって落ち着けるスペースでもあります。飲食中は、友人や家族との会話、食事に意識が向きがちですが、トイレではひとりになって我に返り、冷静に内装や設備を見ることもあるでしょう。

トイレでは排泄するだけでなく、メイク直しや身だしなみを整える場所としても使われるため、滞在時間が長くなることもあります。そのため細かな部分にも気付きやすく、トイレがきれいに保たれていると、もてなしが行き届いていると感じてもらいやすいといえます。

店舗全体の清潔感を左右する

TOTOが実施した、飲食店トイレに対するお客様意識のアンケート調査では、飲食店のトイレがきれいだとお店のイメージがよくなると回答した方が79%と多数を占めています。

反対に、トイレが汚い場合はお店のイメージが悪くなると回答した方が77%で、8割近くにのぼります。つまり、トイレのきれいさが店舗のイメージや清潔感に影響を与えていることがうかがえます。

飲食店のトイレが汚いと「あそこはトイレが汚い」と敬遠されるケースもあり、お客様への配慮が足りないとして、店舗のイメージが悪くなることもあるでしょう。

食事のメニューや味、店員のサービスなどの質がよくても、トイレが汚いと店舗のイメージダウンにつながりかねません。リピーターを獲得するためには、トイレの清潔感や内装に配慮することが求められるといえます。

お客様同士で会話のネタになる

清潔なトイレであっても、どこにでもあるようなトイレのデザインだと、印象には残りにくいでしょう。トイレのデザインにインパクトがあると、印象に残りやすいうえ、お客様同士での会話のネタになることもあります。

たとえば、アクセントウォールで印象的な柄を取り入れたり、こだわりの素材を取り入れたりすると、記憶に残りやすいでしょう。おしゃれな照明で空間を演出するといった方法もあります。

そのほか、インテリア小物や洗面まわりのアメニティにこだわることで、細かなところまで配慮されていると感じてもらえるでしょう。

トイレはほかのエリアから独立した空間のため、メインの空間とコンセプトを変えて遊び心を加えるのもひとつの方法です。特徴的なトイレは覚えてもらいやすく、誰かに話したくなるようなトイレなら、お客様からほかの人に伝わっていくことで宣伝効果も期待できます。

一般的にお客様がトイレに求めるポイントとは

トイレの設置やリフォームの際は、お客様目線で見たときにいくつか押さえておきたいポイントがあります。

男女別のトイレ

小規模な飲食店などでは、男女共用のトイレしかない場合もあります。ただし男性目線でも女性目線でも、男女同じトイレは敬遠される傾向にあります。

たとえばトイレが使用中のため出口で待っていると、中から異性が出てきて気まずい思いをした経験のある方もいるでしょう。自分が使った後のトイレに異性が入ることに抵抗を感じたり、上がったままの便座を戻す際に、不快な気持ちを抱くおそれもあります。

男女別にトイレを設置することで、お客様が安心してトイレを使用できることが期待できます。

和式より洋式が人気

近年では洋式トイレが主流となっており、和式よりも洋式の方が人気の傾向にあります。和式トイレは体勢がつらくなりやすく、とくに高齢者や妊婦さんなどには使いにくいケースもあるでしょう。便器の中も丸見えになるため、不衛生な印象を与えやすい面もあります。

いっぽうで、洋式トイレは楽な姿勢で排泄が可能であり、便座の保温機能やウォシュレットなどの便利な機能付きのトイレも普及しています。トイレの設置やリフォームを考えるなら、洋式トイレを選ぶとよいでしょう。

落ち着く色使いや照明

安心してトイレでの時間を過ごせるように、壁や床、天井の色使いに配慮することも大切です。落ち着いた色合いや暖色系などを使って、居心地のよい空間をつくるとよいでしょう。

さらに、まぶしさを感じない照明を選ぶことも必要です。店舗のメインフロアが落ち着いた雰囲気の場合は、トイレも少し暗めの照明や、温かみのある電球色を選ぶことで統一感を出せます。

トイレに座ったときに、光源が直接見えない場所に照明を配置するなどの配慮や、足元や壁を照らして反射する光を利用する方法を取り入れるなどして、落ち着ける空間をつくりましょう。

ターゲット層別のデザインポイントは?

飲食店のターゲット層によって、とくに配慮したいポイントがあります。男性客、女性客、ファミリー層に分けて、それぞれのデザインポイントをご紹介します。

男性客向け

まずは、男性客に向けたデザインのポイントを2つ見ていきましょう。

イヤな臭いがしない

便や尿のイヤな臭いや、尿はねが原因のアンモニア臭、手洗いスペースやその周辺、トイレのタンクなどに繁殖したカビの臭いなど、トイレはイヤな臭いを感じやすい場所でもあります。

イヤな臭いのするトイレは不衛生な印象を与えてしまうため、臭いに配慮することが必要です。日頃の清掃はもちろん、除菌・消臭スプレーの常備や、換気扇を常に稼働させておくことで、イヤな臭いがこもらないようにしましょう。

換気扇に汚れやホコリが付着していると、空気の循環を妨げてしまうため、換気扇の清掃も忘れずに行う必要があります。

小便器の設置

大便器とは別に小便器を設置しておくことで、さまざまなメリットを得られます。小便器は個室になっていない場合が多く、同じ広さの空間でも多くの台数を設置できることから、トイレの待ち時間の短縮に役立ちます。

さらに小便器は、立ったまま用を足せるため使い勝手がよく、便器のまわりが汚れにくいのもメリットです。男性客をターゲットとする場合は、小便器の設置も検討しましょう。

女性客向け

続いて、女性をターゲットとする場合のポイントを見ていきます。

パウダーコーナー

トイレでメイクや髪型など、身だしなみを整える女性も多いでしょう。そのため、メイク直しができる鏡や、バッグやポーチを置く台を設置しておくなどの配慮が求められます。

トイレの手洗いスペースにしか鏡がない場合は、手を洗う人とメイク直しをする人がお互いに気をつかってしまうため、手洗いスペースとは別にパウダーコーナーを設けるのがおすすめです。洗面台が濡れていて、ポーチを置く場所に困るといった事態も起こりにくいでしょう。

パウダーコーナーは、メイクを直しやすい、明るい照明にしておくこともポイントです。鏡は大きめのものを選び、ポーチやコスメを置く棚を必ず用意しましょう。

親切なアメニティ

アメニティが充実していると、メイク直しや身だしなみを整える際に便利なため、お客様に喜ばれるでしょう。

あるとうれしいアメニティとしては、綿棒やコットン、あぶらとり紙、サニタリー用品、爪楊枝やフロス、使い捨て歯ブラシやマウスウォッシュ、ハンドクリーム、汗拭きシートなどが挙げられます。

充実したアメニティの提供にあたっては、アメニティを置くためのスペースが必要です。女性をターゲットとする場合は、広々としたトイレ空間に設計するなど配慮するとよいでしょう。

ファミリー層向け

ファミリー層に向けた配慮があるトイレなら、小さな子ども連れのお客様も来店しやすくなります。ファミリー層向けに押さえておきたいポイントを3つご紹介します。

ベビーシート&チェアの設置

小さな子ども連れのお客様の場合、飲食の最中に子どものオムツ替えが必要になるケースもあります。トイレにオムツ替えの際に便利なベビーシートがあると、お客様も安心して店舗を利用できるでしょう。

乳幼児を連れたお客様の場合、子どもと一緒にトイレに入るケースも考えられます。そのため、子どもを座らせるベビーチェアなどの設備がトイレの個室内にあると、利用しやすいでしょう。

ベビーカーで入れる広さ

家族や友人と一緒に子連れで来店した場合は、トイレに行く間はほかの大人に子どもを見てもらうことも可能ですが、大人ひとりと子どもで来店した場合は、トイレまで子どもを連れていく必要があります。

ベビーチェアに座れるほどの月齢に達していない、小さな赤ちゃんを連れているケースなどでは、狭い個室の場合赤ちゃんを抱えながら用を足さなくてはなりません。ベビーカーでそのまま入れるほど広い個室であれば、大人も赤ちゃんも安心して利用できるでしょう。

バリアフリーへの配慮

バリアフリーに配慮されたトイレとは、個人の特性や性別、国籍、年齢などに関係なく、誰もが気兼ねせずに使えるように設計されたトイレのことを指します。

具体的には、力が弱い人でも容易に開閉できる引き戸の採用や、トイレに座る際などに使う手すりや着替え台などの設置が挙げられます。

誰でも利用できるバリアフリーのトイレがあれば、ファミリー層を含めてさまざまなお客様が利用しやすくなるでしょう。

さらにお客様が喜ぶおもてなしのデザイン

お客様にさらに喜んでもらうためにできる、デザインのポイントを2つご紹介します。

雰囲気に合ったBGM

店舗内で流すBGMは、空間の雰囲気に影響を与えます。トイレも同様で、狙った効果を得るためにBGMを活用するとよいでしょう。

BGMを流すことで、雑音や騒音を緩和してくれる効果や、リラックス効果などが期待できます。アップテンポの曲の場合は楽しい気持ちになるなど、どんな音楽を流すかによって与える効果も変わってくるため、選曲も大切です。

たとえばターゲット層となる年代に合った音楽を流すことで、席に戻ったときの話題にもなりやすいでしょう。大人な雰囲気の店舗ならスローテンポのジャズ、格式高い雰囲気ならクラシック、レトロな雰囲気なら懐メロをかけるなど、店舗の雰囲気も考慮してBGMを選びます。

遊び心のあるおしゃれ空間

思わず笑顔になるような、遊び心のある空間をつくることで、お客様も楽しめるうえ、印象に残ります。隠し扉を取り入れたり、特徴的な柄や素材を取り入れたりといった方法もあります。

遊び心があり、かつおしゃれな空間を演出して、誰かに「あそこのトイレは面白いから行ってみて」と教えたくなるようなトイレにしてみてはいかがでしょうか。

経営者や従業員にとっても優れたトイレとは

店舗のトイレを考える際は、お客様目線だけでなく、経営者や従業員の目線も考慮することがポイントです。店舗側としてはトイレを清潔に保つ必要があるため、掃除のしやすさに配慮されたトイレを選ぶと使いやすいでしょう。

最も重要なのは清掃しやすさ

自動的に掃除してくれるトイレや、汚れにくい素材でできたトイレなど、掃除時間を短縮できるように工夫されたトイレもあります。表面がツルツルの素材であれば汚れが付着しにくく、撥水性のある素材なら黒ずみの原因となる水垢も付きにくいでしょう。

トイレは主に便器・便座・タンクに分けられますが、それぞれが掃除しやすい形状になっているかどうかもポイントです。

便器と便座の隙間が掃除しやすい設計のものや、汚れがたまりやすい隙間や継ぎ目、便器のフチをなくしたもの、そもそもタンクのないタイプなど、掃除しやすいものを選ぶとよいでしょう。

掃除しやすい壁材や床で清潔に

トイレ本体だけでなく、壁材や床材も掃除しやすいものを選ぶことが大切です。

壁にクロスを使う場合は、消臭機能や汚れ防止機能、吸放湿機能などが付いたクロスを選ぶことで、清潔に保ちやすくなります。タイルは水まわりによく使用される素材で、耐久性や耐水性、清掃性に優れているのが特徴です。

凹凸などがないフラットな床材であれば、拭き掃除もしやすくなります。フローリングを床材にする場合は、汚れや水に強いコーティングが施されたものを選ぶとよいでしょう。フロアタイルなどの水に強い素材を選ぶのもおすすめです。

まとめ

メインとなる食事スペースはもちろん、トイレのデザインにも配慮することで、もてなしが行き届いていると感じてもらいやすくなります。配慮がお客様に伝わることで、リピーター獲得の効果も期待できます。

男女別に設けることや、落ち着いた色使いや照明でおしゃれに演出することなどが求められます。ターゲット層に合わせてデザインすることもポイントです。男性、女性、ファミリー層などの客層に合った、使いやすいトイレをつくりましょう。

トイレの設計の際は、お客様目線に加えて店舗側の目線も考慮する必要があります。掃除しやすい形状のトイレや、清掃性に優れた壁材や床材を採用するなどして、トイレを清潔に保ちやすい設計にするとよいでしょう。