半個室とは?飲食店や美容室に導入するメリット・デメリットを紹介

飲食店などのサービスを立ち上げる際には、店舗の設計が重要になります。その際には「半個室を取り入れるかどうか」を検討される方もいらっしゃるでしょう。

半個室のある店舗は、業種や客層によってはお客様のニーズを満たすことも多く、メリットもたくさん感じられるのでおすすめです。一方で、回転率が悪くなるなどの悩みや、お困りの声を聞くこともあります。

今回は、半個室のメリット・デメリットを店舗デザインという観点で詳しく解説します。

半個室の定義

半個室は、密室空間ではなく、完全には仕切られていない個室のことです。たとえば、一部の壁がロールスクリーンやカーテンなどを使った仕切りになっている、壁の上部が空いているなど、空間と外界の接点があり密室でない状態を指します。

四方を壁やドアで囲んだ密室と比較して、半個室は少し隙間があることで、お店の雰囲気も感じられる空間といえます。

半個室と完全個室の違い

違いは、四方が壁や建具で完全に仕切られているかどうかです。完全個室の場合、個室空間が壁や扉などの建具で完全に仕切られ、密室に近い空間といえます。隣の会話やお店の音はほとんど聞こえず、空間を1組の客で貸し切るイメージです。

一方で、半個室は仕切りがカーテンやパーテンションのように簡単なものであったり、壁の上部が空いていて外部とつながっていたりと、視認性のある空間といえます。

どちらも、客層やターゲット・お店のコンセプトや世界観によって、使い分けが重要です。どのようなお客様に快適に過ごしていただきたいかを考えたうえで、半個室を導入するかどうかを考えれば、後悔のない選択ができるでしょう。

そのためには、半個室のメリットを押さえたうえで店舗デザインを考えることが重要といえます。

半個室にするメリット

半個室のメリットを理解しておけば、これから展開する店舗の設計をする際に役立ちます。半個室のメリットを知っておくことで、半個室を導入するべきかどうかの判断基準がわかるとも言えるでしょう。ここでは、半個室があることで得られるメリットを5つご紹介します。

さまざまな客層の来店を見込める

半個室を好む客層は多いため、さまざまな客層の来店を見込めるのは大きなメリットといえます。一定のプライバシーが守られたスペースを演出できるため、お客様は安心感を得られます。

たとえば「周りに迷惑をかけたくない」と考えるファミリー層が利用する飲食店はもちろんのこと、美容室やサロンなど「周りからの目が気になる」と感じやすい個別サービスを行う店舗において、半個室があるお店にはとくに安心感を得られるでしょう。

高級感や特別感を演出できる

半個室は、設計次第で非日常を感じられる空間を演出することが可能です。店舗の一角に半個室を導入する、半個室それぞれに特別なコンセプトを設定した空間デザインをするなど、半個室の導入はデザインの幅が広がるメリットがあります。

たとえば、飲食店のなかに設けられた半個室では、子ども連れ向けに動物などのかわいいデザインを採用するなど、特別感のある空間を採用できます。

客単価のアップを期待できる

半個室を求めて店舗のサービスを利用するお客様のなかには、リラックスして過ごせる空間を求める傾向にあります。

「記念日のお祝いでゆっくり食事がしたい」「自分へのご褒美で特別なケアをしたい」など、求めるサービスの質も高くなる傾向にあるので、客単価アップが期待できるのです。

利用するお客様のニーズを想定して、コースやオプションを設けつつ半個室を設置すれば、客単価のアップを見込めるため、設計時に導入するかを検討するのは重要なポイントといえます。

完全個室より費用を抑えられる

半個室は、完全個室よりも費用を抑えられる点もメリットといえます。理由は、壁などを建築する手間もなく、仕切りを設置するだけで半個室の導入ができるからです。

完全個室の場合、四方を完全に区切る必要があるため、壁・ドア・襖(ふすま)などの建具を施工する費用が必要です。使用する素材や建具によっても費用は変動しますが、数十万から数百万単位で費用が必要です。

一方で、半個室なら、パーテーションやロールスクリーンなど、建具と比較して費用が安く抑えられます。

状況に応じて仕切りを変えられる

半個室で使用する仕切りを工夫すれば、状況に応じて仕切りの位置が変えられます。

たとえば、8人がけのテーブルであれば仕切りを使って4人ずつにするなど、客数やお客様利用状況に応じて仕切りを変更できます。この場合、席の稼働率も向上するので、売上アップにもつながるといえます。

また、普段は2〜4人がけの客席を半個室で用意し、パーティーや宴会などの大人数で利用するお客様用には、仕切りを柔軟に移動して対応できます。このように、半個室は工夫次第で、来客状況に応じて柔軟に対応できるのも大きなメリットといえます。

半個室にするデメリット

半個室のメリットはこれまで説明してきたように、大きく5つありました。その一方で、デメリットがあるのも現状です。

デメリットも把握したうえで、半個室の導入を検討することで、導入後に後悔しないで済むでしょう。次に、半個室を導入することで感じられるデメリットを3つご紹介します。

広いスペースが必要となる

パーテーションや仕切りを設置するためのスペースが必要になるので、広いスペースを確保することが求められます。

たとえば、同じテーブル数・座席数で半個室なしの店舗と、半個室ありの店舗を比べた場合、半個室を導入する店舗の方が、物件の面積が広くなければなりません。

面積の広い物件は、家賃が高くなる点でデメリットになります。家賃はそのままで半個室を導入する場合は、座席を減らす・一部だけ半個室にするなど、工夫する必要があるでしょう。

回転率が下がる

半個室を導入することで、お客様にリラックスして過ごしていただけるというメリットがありました。しかし裏を返せば、長居することを前提にしているので、回転率が下がってしまうというデメリットにもなりかねます。

そのため、客単価を低く見積もった状態で回転率を上げて売上を確保する、薄利多売のビジネスモデルの店舗においては、半個室の導入は適していないといえます。半個室を導入する場合は、お客様にリラックスしていただくうえで、客単価を確保することを見込んで設計しましょう。

回転率が下がっても、満足度につながる可能性もあるので、半個室を取り入れる場合は、メニューも考慮したうえで判断することが重要です。

コストが余分にかかる

半個室を導入する場合、テーブルや座席のみの店舗に比べて、コストが余分にかかってしまう点もデメリットといえます。通常の設備に加えて、パーテーションやカーテンなどの仕切りの費用も必要になるからです。

通常の仕様に比べると、ひとつの半個室を導入するにあたって、1〜10万円ほど追加でかかると見積もっておきましょう。

半個室はオープンスペースの店舗と比べると追加で費用がかかるものの、店舗を運営するうえで費用を回収できる見込みがあるかなど、設計後の売上の見通しとともに検討することがポイントです。

半個室の導入がおすすめの業種

半個室のメリット・デメリットを考慮すると、導入することでメリットを感じやすい業種があるといえます。客層やお客様の利用目的などを考慮して、半個室の導入がおすすめの業種を4つご紹介します。

カフェ

半個室のあるカフェは、さまざまなシーンで活用できるため、人気を集めています。

たとえば、お子様連れのママ同士が子どもを連れて利用する、カップルや夫婦のデートで2人きりになるなど、おしゃれな空間で周りの目を気にせずに利用したい人にとってうれしいのが半個室です。

そのほか、デスクワークや会議、打ち合わせなどのビジネスシーンでも、半個室のカフェは利用されやすいです。客層が幅広いカフェは、半個室の導入が向いており、おすすめしたい業種のひとつです。

居酒屋

居酒屋を利用するお客様のなかには「プライバシーの保たれた空間でいろんな話をしながらお酒を楽しみたい」というニーズをもった方が多くいらっしゃいます。

居酒屋では、同僚・上司との飲み会や接待など、会社では話せないプライベートな話で盛り上がることもあるでしょう。

周りを気にせず、お酒と会話を楽しみたいと考えるお客様のニーズを考慮すると、居酒屋での半個室の導入をおすすめできます。

美容室

美容院では、サービス内容によっては周りの目線が気になるお客様もいらっしゃいます。そのため、半個室の導入をおすすめする業種のひとつとして挙げられます。

顔剃りやヘアケアなど、普段とは違った体制になるときに、周りの目が気になってしまうこともあります。

お客様が安心してリラックスしながらサービスを受けられるよう、美容室に半個室を導入することで、安心感や満足度の向上も狙えるでしょう。

サロン

サロンを利用するお客様は「自分にご褒美をあげたい」「リラックスして疲れをとりたい」など、非日常な体験を求める方が多いです。そのため、半個室を導入し特別感を演出することで、空間づくりからもニーズを満たすことができるでしょう。

サービス内容によっては、施術内容を周りの人に知られたくないという方もいらっしゃるので、さまざまなニーズに応えられる半個室の導入が、サロンでは重要になるといえます。

半個室を導入する際のポイント

半個室を導入することで得られるメリット・感じられるデメリットを理解したことで、導入を決められた方もいらっしゃるのではないでしょうか。最後に、半個室を導入するうえで後悔しないために、押さえておきたいポイントを5つ解説します。

店舗全体の雰囲気と素材を統一する

半個室ごとにコンセプトを決めてデザインする場合をのぞき、半個室は店舗全体の雰囲気と統一することをおすすめします。

ある半個室ではカーテンで仕切り、ほかの半個室ではロールスクリーンで仕切るなど、使う素材を変えると統一感がなく、お客様は違和感を受けてしまいます。

お客様にとって居心地のいい空間を作るためにも、半個室に使用する素材は、店舗全体の雰囲気と統一しましょう。統一感のある店舗は、印象がよく、世界観も伝わりやすいです。

サービスを提供しやすくする

半個室を導入するときに、とくに気をつけておきたいポイントが導線設計です。お客様の導線と従業員の導線を考慮して設計することで、サービスを円滑に提供しやすくできます。

たとえば、飲食店で半個室を導入する場合、料理の提供時に、仕切りの開け閉めに手間がかかってはいけません。半個室の入り口にテーブルをおくなど、提供時に負担にならない設計が重要です。

また、お客様目線では、トイレの位置や会計までの導線で、不便を感じないような設計が求められます。

顧客満足度を高めるための設備を導入する

半個室を導入する場合、お客様の満足度を考慮した設備の導入も重要なポイントです。半個室で過ごすお客様は、従業員と接点を持つ機会が少ない分、困ってしまう場面も考えられます。

飲食店の場合、注文がスムーズにできるようタブレットでの注文にする、美容院の場合、待ち時間に手持ち無沙汰にならないよう、雑誌やタブレットで楽しめるように準備しておくなど、お客様が不便なく快適に過ごすために、備品を導入しましょう。

業種によって必要な備品は異なります。ターゲットや客層を想像して、備品の準備を進めることをおすすめします。

高機能な空調・換気設備を導入する

半個室は、通常のオープンスペースと比べて、空気が循環しにくく、温度調整が難しいです。換気しやすく、快適な温度に保つためにも、高機能な空調・換気設備を導入することをおすすめします。

高機能な空調を導入したあとは、各半個室で問題なく空調が機能しているかチェックします。空調の効きすぎや、逆にうまく効いていないなどのムラがないかなど、ひとつひとつの個室で確認するようにしましょう。

法律を遵守する

飲食店において、深夜の営業で酒類を提供する店舗では「深夜酒類提供飲食店」の営業許可を申請することが求められます。申請内容のなかには、次のような客室に関する条件が定められています。

●各客室の床面積が一室の床面積を9.5平方メートル以上とすること
●客室の内部に見通しを妨げる設備がないこと

また、深夜以外でも飲食店において「5平方メートル以下の個室」を設ける場合、接待飲食等営業の3号「区画席飲食店」に該当するため、営業許可の申請が必要になります。

まとめ

半個室は、工夫次第でお客様満足度や客単価の向上が見込めます。一方でデメリットもあるため、店舗設計時には半個室の特徴を考慮したうえで、店舗のデザイン設計を行いましょう。

半個室は、業種によって向き不向きがあるので、客層のニーズに合わせて設計したいところです。ご自身の展開するサービスで半個室があるべきかどうか、プロに相談することもおすすめです。

テナント工房では、店舗デザインの設計や半個室の導入に関する相談も受け付けています。お問い合わせや資料請求は無料で行っています。少しでも気になった方は、ぜひお気軽にお問い合せください。あなたの店舗づくりの夢を一緒に叶えます。