風営法ってどんな法律?知らなかったでは済まされない注意点

主にキャバクラやホストクラブなど、接待が必要なお店に適用されるのが風営法というイメージが強いですが、飲食店のスタイルによっては風営法の内容に該当する場合があります。

営業形態が風営法に該当するなら、届け出が必要になります。届け出をしないまま営業を始めると罰則が課せられるため、事前に該当するかのチェックが必要です。

この記事では、風営法の基本・対象となる営業・罰則について詳しくお伝えしていきますので、罰則を受けることがないように理解を深めましょう。

風営法とは

風営法は、正式には「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」という法律のことです。ホストクラブやキャバクラなど、深夜遅くまで営業している飲食店が守るべき法律ですが、インターネットカフェやゲームセンターなども該当し、適用範囲が広いのが特徴となっています。

次項で詳しくお伝えしますが、該当する業種の営業をするためには、風営法に沿って業務内容や内装・設備を決めて届け出をしなければいけません。届け出の内容に偽りがあったり、該当する職種の営業であるのに届け出をしていなかったりすると、業務停止命令が出るなどの罰則があります。

罰則が重いものでは、犯罪行為とみなされて逮捕される場合もあるため、該当するおそれのある職種で営業を開始するのなら、風営法の内容をチェックすることが大切です。

風営法で定められている内容を営業内容・内装・設備などに反映し、問題がなければ許可が下ります。罰則を受けることがないように注意すれば、問題ないでしょう。

法律は難しくてよくわからないという場合は、都道府県など自治体の担当窓口へ問い合わせをして、相談しながら条件・内容をチェックしてください。

風営法の対象となる営業

風営法の対象となるのはどういう営業スタイルなのか、以下の項目に分けて解説していきます。

  • 法律上の「接待行為」を行う店
  • 遊興施設を設けた営業
  • 射幸心をあおる遊技設備
  • 店舗内の広さや照明、営業時間

該当する営業を行うのであれば、風営法に違反しないよう規定を守り、届け出をしてください。

法律上の「接待行為」を行う店

風営法第2条第1項第1号の法律上の接待行為を行う店は、風営法の対象となります。法律上の接待行為に含まれるのは、以下のような行為です。

  • 特定少数の客の隣に継続して座る
  • 客の身体に接触する
  • 特定少数の客と一緒に歌う

一般的には隣に継続して座ったり、身体に接触したりする接待行為は、キャバクラやホストクラブで行われる行為です。しかし飲食を提供する場であれば、風営法に該当する可能性があります。

風営法に該当する営業として「キャバレー、待合、料理店、カフェ、その他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業」と定められているため、キャバクラやホストクラブのほか、料理店やカフェでも対象となるおそれがあります。

遊興施設を設けた営業

遊興(ゆうきょう)施設というのは、文字通り「遊ぶ施設」のことを指します。遊興施設についての定義は、警視庁ホームページにて記載されています。

【以下の行為を不特定多数が行う施設のこと】

  • ショー
  • ダンス(音楽や照明の演出等がある)
  • 演芸
  • のど自慢大会
  • ゲーム
  • 競技
  • カラオケ
  • バー等でのスポーツ観戦

参考元:大阪府警察|「遊興をさせる」とは

ショーやダンスなどを不特定多数が行うように場所を提供したり、営業する側が積極的に働きかけたりすることが、風営法に該当する条件です。

また、ワールドカップなどを一緒に観戦できるスポーツバーも風営法に該当するので、普段の営業では該当しなくても届け出が必要になります。

バーの経営をご予定の方は、内装づくりにこちらの記事もお役立てください。

射幸心をあおる遊技設備

運がよければ利益を得たいという射倖心(しゃこうしん)をあおるような、パチンコやスロット台などの遊戯設備がある店は、風営法に該当します。

射倖心をあおる営業は、細かく「4号営業」と「5号営業」に分かれており、遊戯方法と遊戯設備の2点が区別する際のポイントです。

  • 4号営業:設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業
  • 5号営業:遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるものを備える店舗

参考元:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律

射倖心をそそることが目的とするのか、本来の目的ではないものの射倖心をそそるおそれのあるものを備えるのかで分けられます。

お金のやり取りがある、パチンコやスロット台などを店に置く場合は、風営法の内容を確認して、違反がないように料金などを設定しましょう。

店舗内の広さや照明、営業時間

提供するサービスや設備のほか、店舗内の広さや照明、営業時間が風営法に該当する可能性があります。

【風営法に該当する条件】

  • 広さ:個室になっており、個室ごとの広さが5㎡以下
  • 照明:照度が10ルクス以下
  • 営業時間:午前0時~午前6時

参考元:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律

店の広さや照明については、開業前の内装デザインの段階から風営法の内容を把握し、規定に沿った計画をしなければいけません。

違反した場合は、罰則だけでなく内装デザインをやり直す必要があるため、費用がさらにかかります。開業した後に二度手間とならないように、計画段階から風営法に違反していないか、チェックしながら進めましょう。

どんなことが違反になる?

具体的に、風営法の規定上どんなことが違反になるのか、懲役刑や罰金の重さ別に解説していきます。

6か月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金になるケース

6か月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金になるケースは、以下の通りです。

  • デリヘルやソープ等の不届営業
  • デリヘルやソープ等の届け出に虚偽があった
  • 客引き行為をした
  • 客につきまとい行為をした
  • パチンコ等で現金や有価証券を商品として提供した

参考元:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律

店舗型性風俗特殊営業や、無店舗型性風俗特殊営業に分類されるデリヘルやソープなどの営業は、事前に所在地を管轄する公安委員会に届け出をしなければいけません。

届け出をせずに営業していた場合は、違反となり6か月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金になるおそれがあります。また、風営法に該当する営業で、客引きやつきまとい行為をした場合も同様です。

1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金になるケース

1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金になるケースは、以下の通りです。

  • 性風俗店で18歳未満の者に接客等をさせた
  • 未成年に酒類やタバコを提供した
  • 不正に承認を受けた
  • 18歳未満の者を客として迎えた
  • 午後10時から午前6時の時間帯に18歳未満の者を働かせた

参考元:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律

不正に承認を得て営業していた違反のほかに、主に「18歳未満・20歳未満の未成年」に関する違反が該当します。

18~19歳は店に客として入れるものの、酒やタバコの提供は受けられません。提供した時点で違反となり、受けている許可の取り消しのほかに、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金となるので注意しましょう。

未成年の可能性がある者が客として訪れた際は、同席している客が未成年へ酒やタバコをすすめることがないようにするなど、徹底した管理が必要です。

2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金になるケース

2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金になるケースは、以下の通りです。

  • 名義貸し
  • 営業停止処分を受けた後も営業を続けた
  • 店舗型性風俗特殊営業を許可されていない場所で営業した
  • 無許可で営業を始めた

無許可で営業を始めたり、公安委員会に事前に届け出が必要な店舗型性風俗特殊営業を許可されていない場所で営業したりすると、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金になります。

また、風営法の違反により営業停止処分となったのにもかかわらず、営業を続けていた場合も同様です。本来であれば罰則を受けた後は、指導された内容を改めなければいけません。

生活していけないなどの個人的な理由で営業を続けていると、改善する意思がないとして、重い罰則を受けることになります。本格的に営業を続けられない事態となるため、該当する違反行為はしないよう気をつけてください。

罰金や過料のみのケース

懲役刑はなく、罰金や過料のみのケースは以下の通りです。

  • デリヘルやソープ等で違法の宣伝をした
  • 警察の見回りや調査を妨害した
  • 従業員名簿を作成していなかった
  • 従業員の国籍を偽っていた

違法の宣伝や、風営法を取り締まる警察の見回り・調査の妨害が該当します。また、従業員名簿は常に最新の情報を備える規定があるため、何度も指摘され続けると、改善の意思がないとして罰則を受けるおそれがあります。

内装や営業時間は目立つ部分なので、違反していないか注意する場合が多いでしょう。いっぽう、従業員名簿は軽く考えられがちですが、こちらも罰則の対象となるので、正確に作成する必要があります。

罰金や過料の対象となるものが多く、不安を感じているのなら、指導を受ける前に自治体などの担当者に確認しましょう。

まとめ

風営法は、キャバクラやホストクラブに適用されるイメージが多いですが、料理店やカフェなど適用範囲が広い法律です。店の照明の明るさや広さだけでなく、営業時間によっては、知らないうちに風営法が定めている営業に該当しているおそれもあります。

該当している場合は、届け出が必要です。届け出をせずに営業を続けていると違反行為とみなされ、重い違反では「6か月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金になるケースがあります。

違反となった場合、罰を受けるだけでなく、店の信用も落ちることになりますので、営業が難しくなるかもしれません。飲食やダーツなどの設備を設置する店を開業するなら、専門知識のあるプロに相談して、風営法に違反しないように計画を進めていきましょう。