店舗の入り口に求められるデザインとは?「入りやすい」を「入りたい」に

どんなに素敵な内装でも、どんなに質の高いサービスを提供していたとしても、入店してもらえなければ売上にはつながりません。入り口は通行人に気軽に立ち寄ってもらえるように配慮し、入ってみたいと思われるように工夫することが必要です。

今回は、入店しやすい店舗入り口の特徴や、入ってみたいと思われる設計のポイント、業種別の特徴を解説します。

入り口がなぜ重要なのか

その店舗の顔となる部分の入り口が、重要視される理由を見ていきましょう。

目に留まる入り口で流動客を獲得する

立地条件がよく、質の高いサービスを提供する店舗であっても、来店してもらえなければ安定した売り上げの確保は難しいといえます。リピート顧客の獲得はもちろん、新規顧客の獲得も大切です。

店舗を訪れるきっかけとして、知人の紹介や広告、ネットの情報、SNSなどが挙げられますが、偶然通りかかったことで来店につながるケースもあります。

このように、通りがかりにたまたまお店を見つけて入店する客を流動客といいますが、入り口に配慮することで、流動客の獲得が期待できます。

目立たない見た目の場合、通行人に気付いてもらえずに素通りされやすく、集客につなげることは難しいでしょう。ひとりでも多くの人を惹きつけるように入り口を工夫することが、集客につながります。

駅の場所や立地を考慮して、どの方向から人が多く流れてくるのかを調査し、人通りが多い方向に看板などを設置することで、通行人に気付いてもらいやすくなるでしょう。

店舗の内容をアピールする

何のお店かわからない場合、店舗の存在を認識したとしても入店を迷ってしまうことが考えられます。どんな店舗かが相手に伝わるように工夫すると、安心感を与えることに役立ちます。

何を取り扱っているのかだけでなく、価格帯やメニュー、おすすめ商品、店舗のテーマや方向性などが伝わるようにすることで、より安心感を与えられます。興味を持ってもらえるきっかけにもなるため、入店につながりやすくなるでしょう。

店頭で室内が見えるようなつくりにするのもひとつの方法です。中がどうなっているのかがわかると、入店しやすいと感じてもらいやすくなるでしょう。

よい印象を抱かせる配慮を忘れない

奇抜な装いの店舗は通行人に気付いてもらいやすいものの、派手であればよいという単純なものではありません。その店舗が狙う客層に受け入れられるデザインや、興味・関心を持ってもらえるデザイン、よい印象を持ってもらえるデザインにすることも大切です。

最初に好印象を抱かれると入店を促しやすく、売上につながることが期待できます。そのため、入り口への配慮が重要といえるのです。お客様の視点を重視して、使う素材や色、看板のデザインなどを工夫するとよいでしょう。

入りやすい店舗入り口とは

入店しやすくするために、押さえておきたいポイントを4つご紹介します。

清潔さを感じる

店先の掃除を行い、清潔な状態を保つことが大切です。たとえば店頭にゴミが落ちている場合や、捨てる予定のゴミ袋などが見えていると印象がよくないうえ、店舗の中までも汚れているように感じさせる可能性があります。

営業前後や営業中など、1日のなかでも数回チェックを行い、きれいな状態を保ちましょう。店頭に劣化した箇所がないか、看板は色あせていないか、雑草などが生い茂っていないかなどもあわせてチェックします。

余計なものを置かないようにすると、すっきりとした印象になります。装飾品を置く場合は、装飾品が劣化していないかも確認しましょう。

価格帯や商品がわかりやすい

初めて入る店舗の場合、価格帯やどんな商品を扱っているのかがわからないと、相手に不安感を与えてしまいます。「入ってみたいけれど価格が高そう」などと思われてしまうと、結果として来店してもらえない可能性もあります。

初めて訪れる人でも安心して入店できるように、飲食店であればおすすめメニューを価格とあわせて表記したり、雑貨屋であれば定番商品を価格とともに掲載したりするとよいでしょう。

ブラックボードや電子看板、メニュー表などを活用して、価格帯や商品が伝わるように工夫します。写真や映像を使って、視覚的なアプローチをするのもおすすめです。

利用しやすそうな親しみ

たとえば店頭が黒塗りの外壁や扉で、中も見えない場合、初めて訪れる人にとっては気軽に入店しにくいと感じることもあるでしょう。店頭や外観がやわらかい雰囲気であれば、親近感を持ってもらいやすくなります。

外壁や扉などの色使いや、使用する素材に配慮して、親しみやすさを演出しましょう。淡い暖色系の色合いや、木材などの温かみを感じる素材、手書きのブラックボードなどを取り入れるのもおすすめです。

ただし扱う商品や価格帯によっては、実際に気軽に見るのは難しいケースもあります。親しみやすさを演出する場合は、店舗の方向性から大きく外れないように注意しましょう。

導線が考えられている

人が多く流れてくる方向を把握しておき、人通りの多い方向に看板やメニューを設置することもポイントです。流れと反対方向にメニューなどがあると、通行人に気付いてもらいにくいうえ、どこを見ればよいかわかりにくい可能性があります。

また、入り口から店舗の奥まで導線がつながっていると、初めて訪れた人も店舗の中を確認しやすくなります。店内まで入らなくても中の雰囲気などがわかるため、導線への配慮は入店のしやすさに影響するといえます。

入り口からカウンターまで自然に列ができるような導線が確保されていると、入店してからどう動けばよいかもわかりやすいでしょう。

「入りやすい」を「入りたい」に上げるデザイン

流動客を積極的に獲得するためには「入りたい」と思ってもらう必要があります。流動客の入店を積極的に促すために、できることを3つご紹介します。

市場調査を取り入れる

市場調査によって顧客の考えや市場の動向を把握でき、そこから戦略を立てることができます。市場調査の方法としては、アンケートやインタビュー、電話調査、現地調査などが挙げられます。

たとえば市場調査することでターゲットが明確になり、狙った客層にマッチした設計にすることが可能です。市場調査を取り入れることで顧客について知ることができ、より効果的なアプローチが期待できます。

競合他店との差別化

近隣に競合店舗がある場合、同じような店舗が並んでいると選んでもらえない可能性もあります。自分の店舗に入ってもらえるように、競合店舗との差別化を図ることが必要です。

競合他店を調査して、何を強みとしているのか、アピールポイントなどを把握します。他店との差別化ができるように自店ならではの強みを活かし、店舗のテーマや方向性がしっかりとわかるような入り口にするとよいでしょう。

ただし差別化を図る際は、お客様目線も大切です。独りよがりな差別化にならないように、お客様のニーズを起点とすることを忘れないようにしましょう。

印象的・特徴的な外観

道行く人に興味をもってもらうためには、人を惹きつけるような、特徴的な外観にすることもポイントです。おしゃれな外観や非日常を感じられる装いであれば、ワクワク感を高められ、入店してみたいと思ってもらえる可能性があります。

タイルやレンガ、モルタル、大理石、無垢材など、使う素材を工夫するのもひとつの方法です。真っ白な壁に赤い看板を掲げるなど、色のコントラストを工夫して視認性を高める方法もあります。

また、にぎやかな街並みの中に位置する店舗であれば、あえて無機質なデザインにして目立たせるのもよいでしょう。

業種別に考える入り口デザイン

ひと口に店舗といっても、さまざまな業種があります。業種別にデザインのポイントをご紹介します。

飲食店

カジュアルで気軽に立ち寄れる店舗なのか、格式高い飲食店なのかによって、デザインのポイントが変わってきます。

気軽に立ち寄れる飲食店の場合は、提供するメニューや価格帯がわかるようにしましょう。メニュー表などを置いておき、初めて訪れる人でも予算をイメージしやすくなるように配慮します。

いっぽうで格式高い飲食店の場合は、基本的に予約客をターゲットとするため、価格表示などはせずに、高級感のあるデザインにするとよいでしょう。

アパレル店

洋服にもさまざまなジャンルがあり、ターゲットとする客層にも違いがあります。大きな窓を設置したり、扉を開放しておいたりすると、取り扱っている洋服や店内の様子がわかるため、通行人も安心して入店できるでしょう。

店内がよく見えるように、照明の明るさにも配慮が必要です。ガラス張りの飾り棚があると、季節や流行に合わせて魅力的なディスプレイでアピールできるため、通行人を惹きつけることに役立つでしょう。

美容室・サロン

美容室やサロンは、主に自分をきれいにするために訪れる場所といえます。変化を求めて来店するケースもあり、おしゃれな雰囲気や非日常感を演出するのがおすすめです。

店頭に観葉植物や木材を取り入れて、リラックスできる雰囲気をかもし出すのもよいでしょう。扉や壁をガラス張りにして店内の様子が見えるようにすることで、初めて訪れる人でも安心でき、入店につながることが期待できます。

クリニック

医療機関というと、白い壁や飾り気のない無機質な空間を想像する方も多いのではないでしょうか。最近のクリニックは、カフェ風の外観やホテルのような雰囲気など、医療機関とは思えないようなおしゃれな雰囲気の外装も増えています。

入り口デザインに配慮することで、ほかのクリニックとの差別化を図る効果も期待できます。清潔感を保ちつつ、色使いや装飾品を利用しておしゃれに演出してみてはいかがでしょうか。

まとめ

店舗は内装だけでなく、店舗の顔となる入り口にも配慮が必要です。入り口のデザインを工夫することで、流動客の獲得につながることも期待できます。

取り扱っている商品や提供するメニューがわかるようにすると、初めて訪れる人にも安心感を与えるため、入店を促すことができるでしょう。ガラス張りにすると、店舗内に入らずとも店内の様子が伝わるようになります。

流動客を積極的に獲得するためには、入りたいと思ってもらえる入り口にする必要があります。市場調査を取り入れて顧客を理解したうえで、他店との差別化を図り、魅力的な入り口をデザインするとよいでしょう。