店舗改装時には補助金を活用しよう!改装に必要な費用や注意点など

店舗を新しくレイアウト・デザインするためには、ある程度の資金が必要になります。そのため、改装資金不足という理由で実行を迷っている方は少なくありません。

そこで今回は、店舗改装における補助金や助成金について調査してみました。改装に必要な費用や注意点、成功のポイントも紹介していますので、検討をしている方は必見です。

店舗改装時にかかる費用内訳

店舗を改装するにあたり、事前に準備しておきたいのが費用です。改装工事ができる範囲は、費用によって異なります。

そのため、ある程度予算を決めておかないと、費用不足やプラン変更で大変なことになってしまいます。ここでは、店舗改装時にかかる費用の内訳を解説します。

デザイン費

まず、改装工事にはデザイン費が必要になります。デザイン費とは、文字どおり店舗のデザインにかかる費用のことで、設計費ともよばれます。

デザイン費は、規模や状況によって大幅に変わってきます。そのため相場はありませんが、おおまかに総工事費・坪単価・人件費・技術料などから計算します。

総工事費とは、内装と設備にかかる工事費のことを言います。店舗の大きさに関係なく10~15%が目安になり、塗装や壁紙の貼り替え、インテリア家具などの費用が含まれます。居抜きまたはスケルトンかによっても変わってくるでしょう。

坪単価は、総面積とあわせて計算するのが一般的です。明確な相場は決まっていませんが、1坪あたり3~10万円程度と考えましょう。ただし、狭い店舗は最低料金を設定しているところが多いため、目安よりも高くなる可能性があります。

人件費や技術料は、工事に取りかかった人数です。特殊な工事をしない限り、追加料金は発生しないでしょう。

内装・設備工事代

次に、内装・設備工事にかかる費用です。電気や水道、ガスなどもこれらの費用に含まれ、使用する素材や設備によって変動します。当然、グレードが高いものを使用すると高額になるでしょう。

ちなみに、坪単価で表すと30~50万円が目安になります。居抜きとスケルトンでは後者のほうが高額になりやすく、選択をする際は注意が必要です。とくにこだわりがない方は、居抜きのほうが内装もそのまま残っているので、安価に改装しやすいでしょう。

設備や備品の購入費

そのほか、店舗で使用する機器や備品などにもお金がかかってきます。どれくらいの費用が必要になるかは業種によって異なりますが、準備するものが多いほど高額になります。

ものによっては設置費や工事費がかかるものもありますので、事前に確認しておきましょう。

家賃など諸経費

店舗改装にかかる費用で見落としがちなのが、家賃などの諸経費です。基本的に、前述した内訳で別途費用が発生することは稀ですが、家賃を含めず考えるケースが多いため、用意以上のお金がかかってしまったということになりかねません。

そのため、改装をするときは、諸経費まできちんと頭に入れてから資金計画を立てましょう。

店舗改装に使える補助金と助成金

店舗改装にかかる費用を抑えるために、補助金や助成金の利用が可能です。状況に応じて選べ「業務改善助成金」や「事業再構築補助金」と呼ばれています。この制度は、各企業の生産性向上や経済活性化のために取り入れられました。

ただ、申請をすれば必ず貰えるわけではありません。そのポイントも含めて、補助金・助成金について紹介します。

業務改善助成金

補助金・助成金の種類は、業務改善助成金・小規模事業者持続化補助金・事業再構築補助金・受動喫煙防止対策助成金の4つがあります。

まず業務改善助成金は、規模が小さい事業者や投資に向けた制度です。低賃金で働く労働者の賃上げを目的としており、業務効率化のために人材育成・POSレジ導入などを行います。もちろん、店舗改装時にも活用することができます。

費用は、最大600万円まで可能です。引き上げ金額に応じて決まるため、最低30万円から受けられます。対象になるのは、物価高騰によって利益が減ってしまった企業です。現在は特例コースの受付も再開しています。

ただし、給付を受けられるのは、令和4年度の交付であれば令和5年3月31日までに申請をした方のみです。令和5年度の申請締切は令和6年1月31日までなので、注意してください。

小規模事業者持続化補助金

次に、小規模事業者持続化補助金です。働き方改革を中心に、企業の制度を変更する際に役立てることができ、その際のサポートを行ってくれます。

給付の対象は、販路開拓か業務効率化で異なります。また業務効率化に関しては、事業に取り組む人数が5名以下あるいは20名以下でも変わってきます。

枠は主に5つで、賃金引上げ枠・卒業枠・後継者支援枠・創業枠・インボイス枠になります。

賃金引上げ枠は、文字通り賃金引上げを行っている企業を指します。ただし、事業場内最低賃金が補助事業を終了した時点で、地域別の最低賃金より+30以上でなければいけません。

卒業枠は、小規模事業者の従業員数を超えての雇用を行い、事業を拡大するために小規模事業者から卒業する方です。

後継者支援枠は新たに事業に取り組む方で、経済産業省によるアトツギ甲子園のファイナリストのみ対象になります。そのため、それ以外の方はこの枠を使用できません。

創業枠は創業してからの期間が短い方で、インボイス枠は免税事業者からインボイスする方が対象になります。ちなみに、これまで設けられていた事業再開枠は廃止されたため、現在は利用できません。

事業再構築補助金

事業再構築補助金は、ポストコロナ時代を見据えて創設されました。そのため、対象となる企業は、2020年以降にコロナによって被害を受けた中小企業や中堅企業になります。最大8,000万円まで獲得でき、従業員数101名以上でも制度を受けることができます。

また、通常枠以外にも回復・再生応援枠や緊急対策枠なども用意されています。コロナ渦によって持続が難しくなり、テイクアウトや通信販売業に店舗改装する企業も対象になるでしょう。

補助金額は、従業員数によって変動します。たとえば20名以下であれば100~2,000万円、21~50名になると100~4,000万円の補助金を受けることができます。最大8,000万円の補助金を受けられるのは、先ほども述べた101名以上の中堅企業が対象になります。

そのほか、大規模賃金引上枠や、グリーン成長枠などもあります。

受動喫煙防止対策助成金

受動喫煙防止対策助成金は、その名のとおり受動喫煙を防ぐ目的で創設された制度です。店舗改装時に、専用喫煙室や指定たばこ専用喫煙室を設置する際に受けることができます。一般的な助成金とは異なり、工事を始める前に申請を行う必要があります。

助成金額は、最大100万円です。業種によって補助率が異なり、飲食業は2/3、それ以外は1/2となっています。

補助金を使うときの注意点

補助金や助成金を申請しておくと、各サポートが受けられるため安心です。一方で、いくつかの注意点もあります。使用する前に、正しく理解しておきましょう。

支給条件を満たしているか確認する

基本的に、誰でも簡単に申請ができる制度ではありません。そのため、給付を受けるには条件を満たしている必要があります。

とくに補助金は、審査・採択を踏まなければいけないため、審査に落ちてしまうとサポートを受けられません。

助成金には審査・採択はないものの、経営者が社会保険に加入していることが重要になります。社会保険加入は、従業員が安定して働けていることと、職場環境がよいことを証明する理由になるからです。

申請は工事前に行う

補助金・助成金は原則施工後の申請になりますが、店舗改装の場合は工事前に申請を行います。なかには工事完了の期限が決まっている制度もあるため、工事前にしっかり調整することが大切です。

また、補助金・助成金は予告なく変更されることがあります。去年までは利用できた制度が、翌年には廃止になっていたなんてことは少なくありません。一方で、新しく創設される制度もあるため、申請前に適切な補助金・助成金かも確認しておきましょう。

最近は新型コロナウイルスの影響で、郵送による申請を行っているところが増えてきました。足を運ばなくてもよいかわりに、以前より申請が完了するまでに時間がかかってしまうという欠点があります。そのことも踏まえて、計画的に申請を行いましょう。

原則先払いはされない

小規模事業者や中小企業をサポートするために利用できる制度ですが、給付は原則後払いになります。そのため、店舗改装時の費用としての使用はできません。ただ、受動喫煙防止対策助成金の場合は異なります。

また、支払い方法も一括払いが基本です。資金不足にならないように、ある程度資金調達をしてから申請するようにしましょう。

実施期間内であるか調べる

補助金や助成金は、交付までに時間がかかります。申請後すぐに給付してもらえるわけではないので、実施期間を確認してから申請するようにしましょう。

また、申請をするには書類の準備も必要です。このとき、スムーズに採択されれば比較的早めに給付されますが、それでも原則後払いになるため、数日以内の支給は望めません。

さらに、補助金には事業期間というものが設けられています。この期間の支出以外は経費として認められないため、補助金を受けることができません。

事業期間に関しては「雇用・労働業務改善助成金」のサイトで確認してみましょう。一般的には、年度末より少し早めに設定されることがほとんどです。

現実的な事業計画書が必要になる

申請後にきちんと給付を受けるためには、現実的な事業計画書が必要になります。というのも、補助金や助成金の目的は経済活性化だからです。目的に合った事業を展開してこそ、給付が認められます。

事業計画はもちろんのこと、営業計画も採択されなければいけません。万が一採択されなかった場合、店舗改装にかかる費用は全額自己負担になるので注意してください。

店舗改装でよくある落とし穴

資金計画や事業計画をしっかり立て、いよいよ店舗改装の工事開始と意気込んでいたら、ローンが組めなかったり、スタッフへの休業手当の支払いが必要だったりと、思わぬ落とし穴にはまってしまうおそれがあります。

そんな思わぬ落とし穴を防ぐために、知っておきたいポイントを紹介します。

改装ではローンを組めないことがある

一般的に、店舗改装の工事ではローンが組めないと言われています。そのため現金払いが原則となり、自己資金が準備できない場合は、補助金や助成金を受けることで賄えるようになります。

そもそも、住宅ローンは「住宅」を対象としたローンです。店舗改装は住宅ではないため、どうしてもローンを組みたい場合は、事業融資として申し込まなければいけません。

支払うタイミングは、着工前・工事中・工事完了後の3回です。工事前に一括で支払うことはないので安心してください。資金に余裕がある方や、改装の規模が小さい場合は、着工前・工事完了後の2回でもOKです。

また、建物の状態によっては追加工事が発生することがあります。一度決まった融資金額を変えることはできないため、工事を始める前に、業者の方と明確に取り決めをしておき、無断で追加工事をさせないように気をつけてください。

着工・施工・竣工などの建築用語について、こちらで詳しく解説しています。

スタッフへ休業手当を支払う義務がある

スタッフがいる場合、改装工事を行う期間は仕事ができません。その際の休業手当について、きちんと理解しておく必要があります。

休業手当は、平均賃金の6割以上です。直前の賃金締切日以前の3ヶ月間を基に算出しますが、賃金が日給・時間給・出来高給の場合は3ヶ月間の労働日数で割り、0.6を掛けて算出します。

ただし、賃金の一部が月給の場合と、産前産後の休業期間があった場合は、計算方法が違いますので注意してください。

雇用調整助成金が使える場合も

雇用調整助成金とは、新型コロナウイルスによって影響を受けた企業の雇用を維持するために作られた特例です。

コロナ渦で思うように事業ができなくなり、テイクアウトや通信販売業を導入した企業は少なくありません。またそれにより、店舗改装を余儀なくされた企業も存在するでしょう。

雇用調整助成金は、そんなコロナ渦によって打撃を受けた企業が安心して雇用を続けられるように設けられました。休業手当が支払えない場合でも、この制度を受けていれば一部助成してくれるので安心です。

雇用維持のためにスタッフを出向させた場合も対象になりますので、当てはまる方は利用してみてください。

店舗改装を成功させるポイント

せっかく店舗を改装しても、失敗してしまっては意味がありません。安定継続した事業を続けるためには、どんなことに気をつけたらよいでしょうか?こでは、成功のポイントを紹介します。

改装目的にそった計画を立てる

どんな理由であっても、改装目的にそった計画が必要です。そのため、曖昧な目的で改装を実行してしまうと、採択されにくく失敗するおそれがあります。

また、改装時に利用できる補助金や助成金は、経済活性化につながることを目的としています。ですので、この補助金や助成金自体を目的に改装してしまうと、国や地方の経済活性化からは外れることになります。

計画が不明瞭にならにように、また国や地方の経済を活性化させるためにも、しっかりと検討してから実行しましょう。

削減可能な費用を見極める

改装にかかる費用は膨大です。たとえ補助金や助成金が受けられると言っても、決して安い金額ではありません。そのため、削減可能な費用を見極めることも大切でしょう。

不要な費用は発生していませんか?計画の際は上限を決め、それ以上の金額にならないように気をつけることも必要不可欠です。

たとえば、小売業なら動線を意識したデザインを意識し、テイクアウトを導入するのであればイートイン・テイクアウトのバランスを考えるのがポイントになります。

店舗設計のプロに相談する

初めての改装で、どこから手をつけたらよいか分からないという方は、プロに相談するのもひとつの手になります。

店舗デザインやコンサルティングを手掛けている会社もありますので、一度利用しているとよいでしょう。その際、集客に役立つ情報や提案も得られるので、参考として取り入れましょう。

まとめ

昨今は新型コロナウイルスの影響で事業を縮小し、店舗改装を余儀なくされたお店も少なくありません。なかには、コロナの打撃を払拭して雇用を維持したいという方もいるでしょう。

もちろん、改装の理由はほかにもさまざまです。今回は、そんな店舗改装における費用や注意点を紹介してきました。改装を実行するためには、明確な計画や資金調達が必要になります。

補助金や助成金についても説明してきましたが、コロナによる打撃で雇用維持が難しくなったお店は「雇用調整助成金」というのも存在しますので、今後改装を検討している方はぜひ参考にしてみてください。