着工・施工・竣工とは?それぞれの違いをわかりやすく解説

建築業界には、着工・施工・竣工という言葉があります。建築業界では当然のように使用されている言葉ですが、聞き馴染みがないと、それぞれどんな意味かわからないですよね。

そこで、この記事では着工・施工・竣工の言葉の意味と使い方を解説します。この記事を読んで使い方を覚え、自宅や店舗を建築するときに役立てましょう。

着工・施工・竣工とは

建築工事は着工、施工、竣工の順で進むものです。工事を開始することを着工、定められた設計図をもとに建築中であることを施工、そして工事が終わることを竣工といいます。

それぞれの言葉は工事のタイミングによって使い分けされます。工事の進行状況やタイミングによって適切な言葉があるため、言葉を理解し、使い分ける必要があります。

着工の意味と使い方

着工の意味と使い方を詳しく解説します。

意味

「着工」は工事の開始を意味します。着工・施工・竣工すべてに共通しますが「工」は「工事」を意味する単語です。工事に着手することを熟語にすると「着工」になります。

着工とみなされる工事は、くい打ち工事や山留工事、根切り工事などがあり、地盤改良工事も着工とみなされます。地盤の強度を調べる地盤調査は着工ではありません。あくまでも工事をすると着工になります。

それぞれの工事を簡単に説明すると、くい打ち工事は、工事の基礎ともいえる軟らかい地盤に建築物を構造できるようにする工事です。河川に近い土地や、地震が多く発生する土地では非常に重要な工事といえます。

山留工事は、建築をするにあたり、周辺の地盤や建物が崩れないようにするために行う工事です。支えとなる構造物をつくり、建物を保護します。

根切り工事は、建物の基礎を作るために、地面を掘る工事です。基礎となるコンクリートを打つために一定の深さまで掘り進めていく作業のことをいいます。

地盤改良工事は、建物の地盤を補強する工事です。表層改良工法という土を掘る方法や、柱状改良方法などが知られています。

上記で紹介した主に4つの着工を行うには「建築確認済証」が必要です。

一定規模以上の建築物を建築するためには、許可なしで工事をしてはいけない決まりになっており、建築物基準法違反になります。確認済証が発行される前に着工してはいけないと、念のため覚えておきましょう。

当然建築物基準法を守っている業者がほとんどですが、建築物の納期などの関係から違反している業者もないとはいえません。マイホームや店舗などの建築を依頼する際には法律を厳守している業者を選ぶことが大切です。

使い方

着工は、家などの建築物だけでなく、道路や鉄道などの工事でも使用されます。たとえば「ようやく明日がマイホームの着工日だ」といった自宅などの建築物に使う場合もあれば「道路の工事が未着工のまま1か月が経っている」などと使うケースもあります。

類義語

着工と同じ意味で使用される言葉が、大きく3つあります。それぞれの違いまで覚える必要はありませんが、どんなときにそれぞれの言葉が使用されることが多いのか解説します。

起工

起工(きこう)は、工事を開始する意味で使用されます。起床や、起こすなどと普段から使用する単語のため、イメージもしやすいでしょう。無事に工事を開始できることに感謝し、工事の安全などを祈願する起工式が開かれることもあります。

しかし、起工は「明日マイホームが起工する」「自宅の近所の道路が昨日から起工した」などと使用することは少ないです。主に商業施設やマンションなどの建築工事で使用されることが多い言葉です。

定礎

定礎(ていそ)は、同様に工事の開始を意味します。しかし、たとえば「これから定礎します」「マイホームの定礎日だ」といった表現では使用されることはありません。

ビルや建築物で「定礎」と大きな文字で書かれた石板を目にすることがあると思います。定礎の石板は、工事開始日にモニュメントとして設置されていることが多いです。建築開始日の日付が掘られることもあります。

定礎の設置は義務ではありません。しかし慣習として大規模な建築物や施設、マンションなどには設置されていることが多いでしょう。

着手

着手は、手を着けることから、何かを開始する意味で使用されます。日常生活でも使用する言葉であり、耳にしたり口にしたりする方も多いのではないでしょうか。

たとえば「仕事・勉強に着手する」「弁護士費用として着手金を支払う」などと使用することがあります。

着工や起工は主に工事に限定されるのに対して、着手は工事に限定されません。「工事に着手する」と表現すると着工と同一の意味になります。

施工とは

施工の意味と使い方を詳しく説明します。

意味

施工(せこう)は、工事を進めること・建築中のことをいいます。「施」は、ほどこすと訓読みできる漢字で、事を行うことを意味します。よって工事を施すことから、工事中を意味する言葉です。

施工という言葉だけで工事中という意味を持ちますが、施工中ということもあります。

また、法律用語で法律の効力を発生させることを「施行」といいます。この場合は基本的に「しこう」と読みます。同じ漢字を使用するため、読み方が混同しやすいので注意しましょう。

建築工事で「行」の字は誤りです。あくまで工事に使用される単語のため「工」の字を用いた施工が正しい記載です。

使い方

施工は、主に工事中を意味する言葉であるため、着工をすでに済ませた後で「下水管工事を施工する」「自宅前の道路が施工中だ」などと使用します。

また「施工会社に見積もりを発注した」といった「マンションの施工管理を担当している」といったように、会社の業務を表す一つの言葉として使用されることも多いです。

さらに施工主は、工事を請け負う人物や組織を指します。一方で建築物の建築を依頼する人物や組織は施主(せしゅ)です。要するに施主から依頼された施工を施工主が行うということができます。こちらも混同しやすい単語であるため注意して使用しましょう。

竣工とは

竣工(しゅんこう)の意味と使い方を説明します。

意味

竣工は、工事が終わったことを意味します。「竣」はおわると訓読みできる漢字です。工事が終わることを熟語にすると、竣工になります。

実際は工事が終わっただけでは竣工とはいいません。施工主が竣工検査まで済ませ、施主が使えるような状態であることが竣工の正しい意味です。

また、竣工式と呼ばれる儀式を開くことがあります。地鎮祭、上棟式、と並んで建築三大祭式として知られているものです。

竣工式は大規模な建築物や道路が完成したことを祝うために行われます。新聞やテレビ等のメディアでも式の様子は取り上げられることもあるので、見たことがある方もいると思います。神事を重んじて行われ、式が終了すれば建物は施主に渡されます。

ちなみに地鎮祭は着工の前に、上棟式は棟上げまで行われた際に最後まで無事で完成することを祈って大工さんに感謝の意味を込めて実施されるものです。必ず実施されるものではなく、様式などは地域や住宅によって異なります。

使い方

竣工は、たとえば「下水管工事が竣工した」「この建築物の竣工年は令和元年だ」などと使用します。

先述したように本来は工事が終了し、検査が終了して施主に引き渡しできる状態を竣工といいます。しかし、工事が完成した段階で竣工と考えている人もいるため、竣工と聞いたときには注意しましょう。

また、「竣」は常用漢字ではないため、竣の字を平仮名で「しゅん工」と表記することもあります。これは看板などで使用されるケースです。

類義語

竣工と同様の意味で使用される言葉があります。基本的な意味は同じですが、使われるニュアンスなどが多少異なるため、使い方を大まかに覚えておきましょう。

完工

竣工と同じく建築関連の言葉で工事を終えることを「完工」といいます。完工は「完」という漢字を使用しているように、竣工よりも完成に近いイメージで使用されることが多いです。

竣工は工事が終わったことだけを意味する場合がありますが、完工はすべての工事が完了した場合に使われます。たとえば「ダムの工事が完工した」「1年以上かけて行われていた店舗改装が完工した」などと使用されます。

建築物だけでなく、たとえば店舗の駐車場や、店舗の内装デザインや什器が完成した場合に、完工が使用されると考えておきましょう。

落成

落成は、普段使用しない言葉のため、言葉からはどんな意味か想像するのが難しいかもしれません。たとえば「この神社は鎌倉時代に落成した」「会社の新社屋が落成した」などと使用されます。

とくに施主が使用する機会がある言葉で、ビルやマンションなどの建築物が完成されたときに使われます。落成式も近隣の住民や工事の関係者が建築物の完成を祝う祭式として開かれ、式は式典の要素が強く、新しい建物をお披露目するために行われます。

竣功

読み方と意味はまったく同じですが「竣功」と漢字表記される場合があります。古い時代は「竣功」が多く使用されていたこともありました。

明治時代の書物などには竣功が使用されていますが、現在は「竣工」と使用されることが多いです。

業者によっては、現在も竣功と記載するところもあります。意味は同じなので特段気にする必要はありませんが、知識として頭に入れておきましょう。

また、平仮名で「しゅん功」と表記されることもあります。「工」の漢字が使用されないため工事のイメージをつかみにくいので、注意が必要です。

まとめ

今回は着工、施工、竣工の意味と使い方を詳しくご紹介しました。使用されている漢字の意味から言葉を覚えると覚えやすいと思います。

また類義語が複数ある言葉もあります。建築業界に携わっていなければ類義語を使い分ける必要はあまりないかもしれませんが、大まかに近しい類義語と意味を知っておきましょう。

日常生活で積極的に使用すると頭に定着します。近所で工事が予定されている建物や道路などを、着工・施工・竣工のどれに当てはまるか考えながら見てみましょう。これを機に言葉の意味と使い方を覚えてみてください。