飲食店のカウンター席の役割は?種類と作る際のポイントも解説

レストランや居酒屋に入ったとき、カウンター席とテーブル席のどちらがいいか、尋ねられたことはありませんか?小さいお店だと、カウンター席のみ用意されているときもあります。

カウンター席は店員との距離が近く、中の様子をうかがうことができます。ひとりで飲食店に訪れると、カウンターを利用する場面もあるのではないでしょうか。今回は、飲食店のカウンター席の役割や種類、作る際のポイントをお話ししていきます。

カウンター席の役割

カウンター席は店のもっとも目立つ場所にあるため、店の顔ともいえます。カウンター席が散らかっていると、ほかのスペースがどれだけきれいにされていても、印象が悪くなってしまうでしょう。

カウンター席のメリットは、お客様との距離が近いことです。お客様とのたわいもない会話で、貴重な意見をもらえる機会も生まれやすいでしょう。

また、お客様からしても厨房を近くで見られるので、自分の料理が作られていく様子を眺めながら提供を待てます。

カウンター席を必要とする業態

カウンター席があると、お客様とのコミュニケーションが生まれたり、営業中のオペレーションが楽になったり、さまざまなメリットがあります。

しかし、どんな業態でもカウンター席が有益だとは限りません。ここからは、どんな業態がカウンター席を必要とするのか紹介していきます。

居酒屋やバー

居酒屋やバーなどの店は、昔はスタンドタイプの店が主流でした。しかし現代では、カウンターとテーブルのどちらも用意されている店舗が多くなっています。

居酒屋やバーでカウンター席があると、以下の効果があります。
・厨房から料理を出すことができ、作業効率がアップする
・ひとりで来店するお客様を通しやすい
・カウンターから厨房の様子が見え、注文を取りやすい
・お客様の目に付くところに、メニューやポスターを貼れる
・食事スペースを広くとることができる

多くのメリットが見込めるため、小さい店舗ではカウンターのみのお店もあります。それだけ、居酒屋やバーにとっては有益なレイアウトです。

バーの内装を決めるポイントは、こちらでも詳しく解説しています。

和食店

寿司屋や和食店のカウンター席は、日本独自のものです。その歴史は長く、日本食の料理人が自らの料理に対するこだわりをお客様に直接届けたい、という思いからカウンター席は生まれました。

寿司屋や和食店にカウンター席があると、料理の工程を見ることができ、ライブ感があります。和食はすべての行程が繊細なので、行程を見たうえで料理を食べると、より一層おいしく感じるでしょう。

実際、和食店にカウンター席があるとどのような効果があるのか、下記にまとめました。
・調理工程を目の前で見られるので、お客様に付加価値を感じてもらえる
・ほかのお客様の料理を目の前で見ることで、追加注文につながる
・お客様とのコミュニケーションの時間がとれる

カウンター席の種類

新店をオープンするにあたって、実際にカウンター席を作るとき、カウンター席の種類について理解していなくてはなりません。どんな空間にしたいかによって、カウンターの形や高さを変える必要があります。

カウンター席にはどのような種類があるのか、具体的に説明します。よい店づくりのために参考にしてください。

カウンターの形は、I字型・コの字型・L字型の3つに分かれます。それぞれどのような特徴があり、どんな業態が向いているのでしょうか。

I字型カウンター

I字型カウンターは、もっともベーシックな形のカウンターです。厨房の向かい側に一直線のカウンターがあり、お客様とスタッフが対面するような形のレイアウトです。

スペースをあまりとらないので、小さい店舗や、予算をできるだけ抑えたい場合にはI字型カウンターがおすすめです。お客様との距離が近いので、コミュニケーションをとりやすいのがメリットといえるでしょう。

コミュニケーションを積極的にとりたい、バーや居酒屋、カフェなどの業態がI字型カウンターに向いています。カウンターの幅を長くすると状況を確認しづらくなってしまうので、テーブルの幅には注意しましょう。

コの字型カウンター

コの字型カウンターは、その名のとおり、コの字のテーブルが厨房を囲むように作られたタイプのカウンターです。

お客様の様子を確認しやすいのがメリットで、大きく移動しなくても食事のスピードなどを把握できます。料理の提供がしやすいので、提供頻度が多い食堂や、大衆居酒屋に向いているカウンターです。

L字型カウンター

L字型カウンターは、I字型カウンターの横に垂直になるように席がもうけられているカウンターです。縦と横にカウンターがあるので、店の中にスペースを必要とします。

L字カウンターは、店の雰囲気を品よくみせることも可能です。また、お客様から調理風景が見やすい形なので、寿司屋・天ぷら屋・鉄板料理店など、料理行程を付加価値としてお客様に提供したいお店に向いているでしょう。

高さ

飲食店におけるカウンターの高さは、ローカウンター・ミドルカウンター・ハイカウンターの3種類に分かれ、店のコンセプトや事業形態によって適しているものが変わってきます。それぞれのメリット・デメリットをふまえて、特徴をご紹介します。

ローカウンター

もっとも多く使用されているのが、ローカウンターです。テーブルの高さは70cm前後、椅子の高さが40cm前後というのが基本のスタイルです。

椅子に座るとしっかり足がつくため、長期間座っていても疲れません。また、座りやすいため、子どもや年配の方でも問題なく座ることができます。

ローカウンターはゆっくり料理を楽しむような飲食店に向いているので、居酒屋やファミリー向けのレストランなどで使用するとよいでしょう。

デメリットとして、厨房がお客様の目線より高くなるため、若干威圧感を与えてしまう可能性があります。しかし、厨房の床を下げるなど、工夫次第で改善可能でしょう。

ミドルカウンター

ミドルカウンターは、家庭にある流し台と同じくらいの高さのカウンターです。テーブルの高さは95cm前後、椅子の高さは65cm前後で、椅子に座るとやや足が床に触れるくらいの高さです。

厨房のスタッフとお客様が近い目線になるので、コミュニケーションがとりやすいのがメリットです。カジュアルかつおしゃれな印象を与えるミドルカウンターは、スペインバル・カジュアルフレンチ・洋食店などに向いているでしょう。

ミドルカウンターはあまり使われないので、ミドルカウンターに合った椅子を探すのが難しい傾向にあります。その場合、オーダーメイドで購入することになるので、注意してください。

ハイカウンター

ハイカウンターは、おしゃれなバーなどでよく使われるスタイルです。テーブルの高さは105cm前後、椅子の高さは75cm前後なので基本的に座ると足がつきません。

厨房のスタッフとお客様は同じ目線にあるため、話しやすいのがメリットです。おしゃれで落ち着いた雰囲気に合うので、バーやアメリカンカジュアルの店に向いているでしょう。

足が床につかないので、長居するには疲れてしまいます。お客様に長く快適に過ごしてもらいたい場合は、足をかけられるタイプの椅子を選ぶようにしてください。

カウンター席を作る際のポイント

カウンター席を作るときには、いくつかのポイントを抑えて作る必要があります。回転率やコスト面だけ考えて作ると、カウンターのよさを活かすことができなくなってしまうので、作る際のポイントをご紹介します。

コンセプト

まずは店のコンセプトをはっきりさせましょう。コンセプトが決まっていないと、どのようなタイプのカウンターを設置するか決めることができません。

コンセプトを決めるうえで大切なのは、以下の内容です。
・営業時間帯
・年齢層、性別、職業
・メニューやサービスの特徴
・商品の価格帯
・出店場所

このような内容から、店の軸をはっきりさせることで、コンセプトが必然的に決まってきます。コンセプトが決まったら、それに沿ったカウンターを作りましょう。

横幅と奥行

カウンター席は、うまく場所を活用すれば効率的に営業できます。しかし、どれくらいのスペースを利用するのが最適なのかしっかり考えて作らないと、居心地の悪いカウンターになってしまいます。

そこで大切なのが、横幅と奥行きです。横幅は、一般的に1人あたり600mmとされています。たとえば、全体の横幅が2500mmだった場合、4席だと横幅625mm、5席だと横幅500mmになります。

5席でも問題ありませんが、実際に座ると、隣の席との間隔が近く感じます。ゆったりと使用してもらいたい場合は、4席にして余裕をもたせるようにしましょう。

奥行きは、一般的に450mm~500mmがよいとされています。これはあくまでも平均的な長さで、お客様が頼んだ品物が問題なく収まるスペースがなければいけません。

イメージがわきにくい場合は、実際にコップやお皿を並べてみましょう。1人で来たと想定して、どれくらいのスペースが必要かを実践し、窮屈ではない奥行きにするとよいです。

目線の高さ

カウンターの高さによっては、スタッフがお客様を見下ろす高さになってしまうことがあります。とくに、ローカウンターではそのような形になりやすいです。

厨房から見下ろしているつもりはなくても、お客様からすると、食べている様子を常に見られているような感覚になります。そのため、できるだけお客様と同じくらいの目線になるように作ったほうがよいでしょう。

付け台

付け台とは、お客様の席と厨房との間にある棚のことです。付け台には、料理を置いたり、調味料を置いたりしている店が多いです。

付け台は、カウンターを作るうえで同時に設置するものですが、高さが低すぎるとお客様の手が届いてしまい、衛生的によくありません。そのため、お客様の目線と同じか、少し高めの位置に作るとよいでしょう。

素材

カウンターの素材は、選び方によって大きく店の雰囲気を左右します。そのため、コンセプトに合った素材を選ぶようにしましょう。

木製のカウンターは、木の種類によって雰囲気や価格も変わります。総合していえるのは、温かみと高級感を出せる素材であることです。寿司屋や和食料理店での使用が多く、木の風合いや質感が店の雰囲気をよくします。

左官のカウンターは、セメントのような質感を出すことができます。シックで大人びた雰囲気にしたい場合は、左官のカウンターを選ぶとよいでしょう。

メラミン樹脂加工のカウンターは、石目や木目などの柄をプリントできます。比較的安価で作れるため、価格を抑えたいときにおすすめです。しかし、あくまでもプリントしてあるだけなので、質感までは表現できないと理解しておきましょう。

荷物入れ

カウンター席はスペースが限られているため、カウンターを作る時点で荷物置き場をどこにするか考えなくてはいけません。

椅子の下にかごを置くスタイル、テーブルの下にかけるスタイルなど、さまざまなやり方があります。ある程度、荷物置き場の場所を想定したうえで、カウンター作りにとりかかってください。

また、冬場はコートをかける場所も確保しなくてはいけません。荷物置き場と同時に、コート掛けの場所も想定しておきましょう。

まとめ

今回は、飲食店のカウンター席について、役割や種類などを具体的にご説明してきました。一見するとすべて同じようなカウンターに見えるかもしれませんが、高さや形など、細かい部分まで計算されて作られています。

考えて作られた設計だからこそ、お客様は快適に楽しく食事を楽しむことができるのです。これから飲食店の出店を考えている方は、店のコンセプトに沿ってカウンターを取り入れてみてください。

店に合ったカウンターが作れれば、直接的に集客や売上につなげることができるでしょう。ぜひこの記事を参考にして、よいカウンターを作ってみてください。